レジデントノート:中心静脈カテーテル 穿刺・留置のコツがわかる!〜適応の判断から手技のポイント・合併症の対応まで、安全な実践に直結するための基本を身につけよう
レジデントノート 2020年7月号 Vol.22 No.6

中心静脈カテーテル 穿刺・留置のコツがわかる!

適応の判断から手技のポイント・合併症の対応まで、安全な実践に直結するための基本を身につけよう

  • 佐藤暢夫,野村岳志/編
  • 2020年06月10日発行
  • B5判
  • 164ページ
  • ISBN 978-4-7581-1646-6
  • 定価:2,200円(本体2,000円+税)
  • 在庫:あり
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特集にあたって

特集にあたって

野村岳志
(東京女子医科大学 集中治療科)

中心静脈カテーテルはリスクを伴う手技である

研修医の諸君! 医師になって多くの知識,技術を学びはじめていることと思います.学び得た知識は活用しても,すぐには明らかな結果として現れないことが多いです.しかし技術を習得すると,その手技を行った直後に結果がでるため(手技が上手い下手に関わらず),早く習得し,行いたいというモチベーションがわいてくるはずです.そのため種々の技術の早期習得をめざす研修医も多いと思います.中心静脈(central venous:CV)カテーテル挿入もその1つでしょう.

ところで,中心静脈の定義を知っていますか? 中心静脈とは胸腔内にある大静脈のことです.そのため,そこにカテーテルを挿入するという手技には致死的合併症のリスクが必ず潜んでいて,その合併症はすぐに心肺機能に影響を及ぼします.胸腔内出血,血腫による気道閉塞,気胸,心タンポナーデ,空気塞栓症,ガイドワイヤーによる血管損傷など,カテーテル挿入時や留置中,抜去時に生じる致死的な合併症は多種あります.そして,致死的合併症を生じる可能性がある手技を,医師免許をもらった直後に短時間の教育で行っている,それがCVカテーテル挿入の現状なのです.多くの外科的手術は習得までに時間を要します.助手として手術に入って,術者になるまでに月単位・年単位の習得期間が必要です.少なくとも中心静脈手技で生じる合併症の発生機序と対応を理解できるまで,CVカテーテル挿入手技は習うべきでない! と筆者は考えます.また穿刺手技に係る死亡事例が現在も依然報告されているため,医療事故調査・支援センターからも「中心静脈穿刺合併症は皆無にできないまでも,穿刺合併症を減らし,特に死亡に至る事例を回避するにはどうしたらよいか」という視点で医療事故再発防止に向けた提言がなされています.

さて,このように危険なCVカテーテル留置ですが,臨床研修中に経験すべき基本的な手技とされています.そのため,臨床研修中の医師は研修施設などで行われるCVカテーテル留置の講習会を受けることが必須となります.この講習会では基本的な知識や手技を学ぶことができますが,短時間の講習会は研修医に臨床での仮免許を与えているに過ぎません.講習会の後に実際に患者さんに行うと上手くいかず,上級医(各施設のCVカテーテル挿入指導医が望ましい)に手技を止められ,挿入を交代してもらうということもよくあります.

本特集の構成と特徴

今回の特集では挿入手技ありきではなく,多方面からCVカテーテル留置について展開しました.闇雲に上級医の言葉に従ってCVカテーテルを留置するのではなく,本当に必要な状況なのかを考え,必要と判断された場合に末梢挿入型中心静脈(peripherally inserted central:PIC)カテーテルでの代用ができないかどうかを検討することが,今の医療では必要であると学んでください.また,患者さんとその家族に対して十分な説明を行い文章で同意を得ることも必要です.同意書にないCVカテーテル留置は医療として認めてもらえないことを理解してください.医療とは医師と患者さんの同意のもとに行われるものであり,同意がない場合は傷害罪を問われかねません.そして,手技を行う前には事前の評価と計画立案が重要です.計画には,挿入が難しく手技が成功しない場合に挿入手技を諦める(撤退する)タイミングも含めておきましょう.そして手術と同様,手技開始前にブリーフィング(タイムアウト)を行います.20年前までは行われていなかったことが現在では必要です.新しい世代を担う医師に,この手続きは面倒な手続きではなく通常業務であるという意識がめばえ,医療安全の文化に則りCVカテーテル留置を行うことを期待します.

また,CVカテーテル留置・管理・合併症の対応などについては,日本全国のCVカテーテル留置教育に携わっている先生がたに,臨床現場で実際に経験しないとわからないようなコツやポイントを具体的に解説してもらっています.最近やっと日本で用いられることが増えてきたPICカテーテルについても,「上手くいくコツ」を含めて解説してもらいました.君たち研修医の先生がやりがちな失敗なども記載しているので,安全な実践に直結する特集となればと思います.

CVカテーテル留置はすばやく留置すること以上に,安全に行う,適切に中止することがPriorityである

著者プロフィール

野村岳志 Takeshi Nomura
東京女子医科大学 集中治療科

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