レジデントノート:術中の全身管理を任された!〜麻酔導入後から抜管まで、患者のわずかな変化も見逃さないモニタリングのポイントとトラブル対応
レジデントノート 2021年10月号 Vol.23 No.10

術中の全身管理を任された!

麻酔導入後から抜管まで、患者のわずかな変化も見逃さないモニタリングのポイントとトラブル対応

  • 川口昌彦/編
  • 2021年09月10日発行
  • B5判
  • 172ページ
  • ISBN 978-4-7581-1668-8
  • 定価:2,200円(本体2,000円+税)
  • 在庫:あり
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特集にあたって

特集にあたって

川口昌彦
(奈良県立医科大学 麻酔科学教室 教授)

麻酔科初期研修で何を学ぶの?

初期研修では,1カ月の麻酔科研修を経験することが多いかと思います.麻酔科初期研修では,マスク換気,気管挿管,末梢静脈確保,動脈ライン確保などの基本手技に加え,基本的な全身管理を学習できます.期間が短いために,つい基本手技の習得のみになってしまう場合も少なくありません.しかし,麻酔科研修で学べる全身管理の基本は呼吸,循環,代謝,体液管理など重要なものばかりです.とはいっても何も勉強せずに麻酔科の研修に行くだけでは論理的で実践的な知識は身につきません.あらかじめ勉強し,シミュレーションすることで有意義な麻酔科研修を送ることができます.

麻酔維持は退屈ではない!

麻酔導入で,モニター装着,静脈路確保,マスク換気,気管挿管,胃管挿入などを一通り終えるとホッとします.手術がはじまる前に,麻酔を深くして手術侵襲に備えます.いったん手術がはじまると,循環動態も安定し,特にすることがないような状況にみえます.特に,外科系で初期研修をしているときに,麻酔科医は麻酔維持で何をしているのかなと疑問に思うこともあるかもしれません.しかし,麻酔維持にこそ学習すべき多くのことが含まれています.

1)患者さんの状態をモニタリング

心電図,血圧,酸素飽和度,呼気終末二酸化炭素分圧,体温,麻酔深度,筋弛緩などを絶え間なくモニタリングします.これに加え,視診,触診,聴診など五感を使って患者さんの変化をとらえます.重症例などでは,これらの基本モニターに加え,非侵襲的心拍出量モニター,肺動脈カテーテル,経食道心エコーなども使用します.手術中は,これらのモニターを常にチェックし,少しの変化でも察知する必要があります.

2)手術侵襲の変化をモニタリング

常に手術操作を観察することが重要です.痛み刺激の変化,出血などはないか? 手術操作で心臓血管系への影響はないか? 体位の変化はないか? などを確認します.これらの変化は循環や呼吸の状態に影響を及ぼすことが多々あります.手術操作や患者さんの変化,また手術室全体の動きをみながら,状況を常に把握しておく必要があります.

3)起こりうる危険を予測

術前の患者さんの状態,手術操作の状況などにより,予想される危険は各患者さんや術式によって異なります.どのような事象が起こりうるのかを予測することは重要です.また,軽微な変化や予兆を見逃さないことが重要です.早期であれば重大な合併症の発生を回避できることが多いからです.

4)イベント発生時の対応をシミュレーション

常に起こりうるイベントを予測し,発生した場合に何をするかのシミュレーションをしておくことが重要です.各症例で起こりやすい事象や,どんな症例でも稀に発生するアナフィラキシーショックや局所麻酔薬中毒などもその一例です.勉強しておくことはたくさんあります.

5)イベント発生時に対応する

麻酔中にイベントが発生した場合,患者さんの状態は急速に変化しますので,迅速な対応が必要となります.もちろん指導医の指示に従いますが,ある程度シミュレーションしていると,どのようなタイミングで何をするのかが理解しやすくなります.この体験が次回のイベント発生時の大変よい勉強になります.

本特集のねらい

本特集では,“研修医が知っておくべき術中麻酔管理のポイント”として,麻酔導入後の麻酔維持から抜管までの間で注意すべきことや,起こりうるイベントやその予防策,発生時の対応などを解説いただいています.具体的な症例呈示もあるので,どのタイミングで何をするか,何が予兆なのかも勉強してもらえればと思います.短い初期研修を最大限に活かすために,あらかじめイベント発生とその対応のシミュレーションをしておくことで,実りの多い麻酔科研修が実施できるのではと思います.さらに,本特集が麻酔維持だけでなく,一般臨床における患者管理の一助にもなれば幸いです.

著者プロフィール

川口昌彦(Masahiko Kawaguchi)
奈良県立医科大学 麻酔科学教室 教授
専門領域:周術期管理,神経麻酔
術前・術中・術後管理からなる多職種による周術期管理で患者さんのアウトカム改善をめざしています.

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