レジデントノート:敗血症診療 その“一晩”を乗り越える〜早期診断からショック対応・抗菌薬・ICU管理・病状説明まで迅速な治療介入に必須となる意思決定の指針、教えます
レジデントノート 2021年12月号 Vol.23 No.13

敗血症診療 その“一晩”を乗り越える

早期診断からショック対応・抗菌薬・ICU管理・病状説明まで迅速な治療介入に必須となる意思決定の指針、教えます

  • 髙場章宏/編
  • 2021年11月10日発行
  • B5判
  • 170ページ
  • ISBN 978-4-7581-1671-8
  • 定価:2,200円(本体2,000円+税)
  • 在庫:あり
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特集にあたって

特集にあたって

髙場章宏
(JA広島総合病院 救急・集中治療科)

敗血症パンデミックに備えよ!

すべての診療科で遭遇する致死的な疾患といえば,敗血症.日本では高齢化に伴い,敗血症患者がさらに増加すると予想されています.その予後を左右するのは,早期診断・早期治療.一晩の遅れは,まさに命取りとなります.あなたは自信をもって対応できますか?

複雑化した敗血症診療

私が初期研修医だった10年前,敗血症性ショックの治療といえば,EGDT(early goal-directed therapy,早期目標指向形治療)が主流でした.中心静脈圧を指標として十分な輸液を行い,それでも平均血圧が低ければ血管収縮薬を使用,ショック(=酸素需給バランスの異常)が改善しているかどうかをScvO2で判断し,目標に到達していなければ動脈血酸素含有量を増やすために輸血するか,心拍出量を上げるために強心薬を使用する,というものです(1).プロトコルの指標と目標値がはっきりしており,研修医でもこの通りに行えば対応できたので,私は敗血症診療が好きになりました.

しかし,その後行われた検証で,EGDTは通常治療と比較して,予後を改善しないことが示されたのです2〜4).この10年ではっきりしたこと,それは,① ショックの臨床症状は複雑・曖昧であり,単一の指標を用いて治療介入を決定するのは困難である,② 敗血症は異質性の高い症候群であり,EGDTのような画一的な治療ではうまくいかないこともある,ということだと思います.

敗血症のガイドラインを読んで,イマイチどうすればいいかわからないと思った読者の方もいるのではないでしょうか.それは,「こういうときは,こうしておけばOK!」という,誰にでも使える万能な診療方法がないからです.敗血症診療は,複雑なんです.

敗血症患者を“一晩診る”ために必要な意思決定

とはいえ,緊急性の高い敗血症診療では,検査する/しない,治療する/しない,専門医を呼ぶ/呼ばない…といったことを,迅速に決めなければなりません.医師の主な仕事は,意思決定なのです.

敗血症患者を一晩診るうえで,予後を左右する意思決定のポイントがいくつか存在します.本特集では,そのポイントをひとつの症例の時系列に沿って,考え方はシンプルに,アクションは具体的になるよう解説していきます.

1)敗血症とショックに気づく(pp.2076〜2084)

“敗血症に気づく”というスタート地点に立てなければ,早期介入は不可能です.

発熱がなくても感染症を疑えますか? 血圧が保たれていてもショックを認識できますか? ここが最も難しく,最も重要なポイントです.

2)救急外来での循環管理(pp.2085〜2094)

敗血症は循環を不安定にし,あっというまに患者さんをショックに陥れます.輸液の指示や,血管収縮薬の指示は出せますか? 崩れた循環を立て直すための,初期蘇生の戦略を解説します.

3)感染源の検索(pp.2095〜2102)

全身管理だけ頑張っても患者さんは救えません.感染症に対する治療こそ根本治療であり,そのためには敵が何者なのかを特定する必要があります.感染源検索の「型」を身につけましょう.

4)抗菌薬の投与 その① 原因微生物の推定(pp.2103〜2112)

5)抗菌薬の投与 その② 抗菌薬の選び方(pp.2113〜2124)

患者背景,感染臓器から原因微生物を推測し,なるべく早く,適切な抗菌薬を投与しなければなりません.そのためには,微生物・抗菌薬双方の知識が必要です.グラム染色をベースにした抗菌薬の選び方を解説します.

6)感染源のコントロール(pp.2125〜2131)

状態が悪いときこそ,ドレナージやデブリードマンを行って感染の元を断つ必要があります.とはいえ,専門医を呼ぶのはハードルが高いですよね.そのコツと心得も伝えます.

7)ICUでの循環管理(pp.2132〜2140)

ショックを離脱できないとき,どうすればよいのでしょうか? 重症患者における全身管理の最重要点は,酸素需給バランスを整えることです.この目的を常に意識することで,ショック治療の三本柱を理解できるはずです.

8)病状説明における意思決定(pp.2141〜2148)

敗血症に限らず,重症患者を診るとき,避けて通れないのが患者さん・家族に「重い話」をして,治療方針を決めること.初期研修医には荷が重いかもしれませんが,主治医の責務です.なぜ難しいのか? その理由から,コツを解説していきます.

当直で敗血症に出会っても自信をもって対応できるよう,最も大事な“一晩”の初期対応スキルを身につけていきましょう!

※2021年10月6日追記:この特集を書き終えようとしていた10月2日に,敗血症の国際的ガイドラインであるSSCG 2021(surviving sepsis campaign guidelines 2021)5)が公表されました! 非常に実践的なガイドラインとなっており,一読されることをお勧めします.本特集の内容も,このガイドラインの推奨とおおむね相違ないと思います(ガイドラインにあわせて急遽修正する必要がほとんどなかったので,助かりました).

引用文献

  • Rivers E, et al:Early goal-directed therapy in the treatment of severe sepsis and septic shock. N Engl J Med, 345:1368-1377, 2001(PMID:11794169)
  • Yealy DM, et al:A randomized trial of protocol-based care for early septic shock. N Engl J Med, 370:1683-1693, 2014(PMID:24635773)
  • Peake SL, et al:Goal-directed resuscitation for patients with early septic shock. N Engl J Med, 371:1496-1506, 2014(PMID:25272316)
  • Mouncey PR, et al:Trial of early, goal-directed resuscitation for septic shock. N Engl J Med, 372:1301-1311, 2015(PMID:25776532)
  • Evans L, et al:Surviving sepsis campaign:international guidelines for management of sepsis and septic shock 2021. Intensive Care Med:doi:10.1007/s00134-021-06506-y, 2021(PMID:34599691)

著者プロフィール

髙場章宏(Akihiro Takaba)
JA広島総合病院 救急・集中治療科
患者さんに対する意思決定を行い,それを振り返ることで経験値が得られ,医師はレベルアップしていくものだと考えています.
研修医の先生に敗血症性ショックの患者さんを一晩診てもらうと,大幅にレベルアップすることがよくあるんですよね.それは,全身管理や感染症治療における多くの意思決定が,たくさん経験値をもたらしてくれるからなのでしょう.
本特集を,敗血症に立ち向かうためのガイドブックとして読んでいただければ幸いです.

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