Gノート増刊:ジェネラリストのための 診断がつかないときの診断学〜非典型症例・複雑な症例に出会ったときの考え方とヒント
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Gノート増刊 Vol.6 No.2

ジェネラリストのための 診断がつかないときの診断学

非典型症例・複雑な症例に出会ったときの考え方とヒント

  • 松村正巳/編
  • 2019年03月01日発行
  • B5判
  • 169ページ
  • ISBN 978-4-7581-2336-5
  • 5,280(本体4,800円+税)
  • 在庫:あり
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痛みや不明熱など,診断に悩むことの多い症状について具体的な症例を提示し,「実際に何をどうしたらいいのか?」を実践的にガイド.また,診断思考過程において陥りがちなピットフォールをあげ,正しい診断を導くための手立てを紹介.

目次

序【松村正巳】

第1章 診断困難症例に出会ったら

1 診断困難症例に出会ったら【松村正巳】
2 診断に困ったときにどうするか? ~考え方,連携のススメ,支援ツールの活用【徳増一樹,小比賀美香子,大塚文男】
3 診断困難症例に対するアプローチ【畠山修司】

第2章 診断に苦慮した症例 〜何が難しいのか

1 痛み・疼痛の症例 ①血管痛を訴える症例【上原孝紀,生坂政臣】
2 痛み・疼痛の症例 ②胆石・胆嚢炎の鑑別【上田剛士】
3 関連痛の症例【栗山 明】
4 不明熱の症例【渡邉力也,川島篤志】
5 倦怠感を訴える症例【和足孝之】
6 免疫疾患の症例【藤井 博,髙橋芳徳】
7 他の医師と自分の診断が異なった症例【原田侑典,志水太郎】

第3章 診断がつけられなかった症例 〜そのときどう考えたか・どう対応したか,今どう考えるか

1 1年間のペインクリニック受診で改善がなかった左上肢,背部痛の症例【清田雅智】
2 原因不明の呼吸困難の症例【金城紀与史】
3 ステロイド内服中の長期入院患者に認められた発熱の症例【上山伸也】
4 医学的に説明のつきにくい症状を訴える患者の症例【原田 拓】
5 尿路感染症だと思ったら尿路感染症ではなかった症例【漆谷成悟】
6 進行する多発性単神経炎と皮膚所見を認めた症例【神谷尚子】
7 Walk inで受診した壊死性筋膜炎の症例【鈴木貴之】

第4章 正しい診断を導くために 〜これからの診断学

1 診断思考プロセスのピットフォールを知る【山本 祐】
2 正しい診断を導くための手立て【清水郁夫】
3 医療支援のためのAI ~総合診療医とのかかわり【寺裏寛之,畠山修司,小谷和彦】

『第1章 診断困難症例に出会ったら 1 診断困難症例に出会ったら』より抜粋

ジェネラリストのための 診断がつかないときの診断学 立ち読み1 ジェネラリストのための 診断がつかないときの診断学 立ち読み2 ジェネラリストのための 診断がつかないときの診断学 立ち読み3 ジェネラリストのための 診断がつかないときの診断学 立ち読み4
書評・感想
  • 総合診療医を総合診療医たらしめるコンピテンシーはいくつもありますが,そのなかでも特に重要な部分を担っているのが,診断能力の幅広さ,すなわち臨床推論の多能性ではないでしょうか.プライマリ・ケアの5つの理念であるACCCAの中の1つのComprehensiveness(包括性)の評価指標の1つに,診断病名の多様さがあげられていることにも,それは如実に表れています.近年,診断学の良書が多く出版され,文献へのアクセスも整備され,われわれはその恩恵にあずかって日々診断しています.しかし,それでも診断に苦慮することは少なくありません.私は無床診療所と小病院で臨床業務を行っており,かつては大学病院で勤務した経験もありますが,検査機器の有無や患者の種類だけでは説明しきれない,おのおのの現場における診断の難しさがあり,最終的に診断が確定できなかった事例も複数経験しています.皆さんもきっとそんな経験があるのではないでしょうか.そんなとき,われわれはしばしば診断を「あきらめ」たり,臨床推論を「中止し」たりしていないでしょうか.

    本書を手にしてまず感動した点,それは,診断がつかないことを肯定している点です.つまり,診断に苦慮した際に,「いかに華麗に診断を導き出すか」にとどまらず,「たとえ確定診断に至らなかったとしても,どう症例に向き合うか」を教えてくれる内容となっているのです.第1章「診断困難症例に出会ったら」では,なぜ診断が困難なのかをパターン化して分析したうえで,臨床推論に関係する知識と経験の関係性や,思考の流れとのかかわり,有効なツールとそれを有効に用いるための向き合い方を教えてくれます.第2章「診断に苦慮した症例」さらには第3章「診断がつけられなかった症例」では,さまざまな分野の診断困難・不能症例に対して,ただ単に臨床推論の流れを示すだけでなく,そのとき疾患と対峙した医師がどう考え,何が難しかったか,対応の根拠と考察のピットフォールなどを生の声で伝えています.事例ベースの論述にもかかわらず,読んでいて臨床推論の全般的な流れや自分の診断能力・体系に考えを巡らせることができるのは,本章が上記のような内容であるためでしょう.第4章「正しい診断を導くために」では,診断エラーの発生についての理論をもとに,今後われわれがどのように診断学と付き合い続けるべきか,今後の診断学がどうなっていくのかについて,総括的な学びを与えてくれます.

    読破して,臨床推論に具体的に役立つ内容であるのはもちろんのこと,われわれ総合診療医が今後向き合い続ける診断学とのよい関係性を築いてくれる,このうえない良著だと実感しました.1人でも多くの総合診療医が,本書を通じて診断学と付き合いを深められることを願います.

    井階友貴(福井大学医学部 地域プライマリケア講座)

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