レジデントノート:脳卒中診療 THE スタンダード〜救急初療から画像診断、治療方針、全身管理、リハビリテーションまで研修医が知っておきたい基本をシンプルに教えます
レジデントノート 2023年12月号 Vol.25 No.13

脳卒中診療 THE スタンダード

救急初療から画像診断、治療方針、全身管理、リハビリテーションまで研修医が知っておきたい基本をシンプルに教えます

  • 中村光伸/編
  • 2023年11月10日発行
  • B5判
  • 148ページ
  • ISBN 978-4-7581-2707-3
  • 定価:2,530円(本体2,300円+税)
  • 在庫:あり
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特集にあたって

特集にあたって

中村光伸
(前橋赤十字病院 高度救命救急センター 集中治療科・救急科)

日本の循環器病の現状と対策

皆さん,脳卒中を含む循環器病が医療においてどのような位置づけにあるかご存知でしょうか?

2022年の人口動態統計1)によると,心疾患は死亡原因の第2位,脳血管疾患は第4位であり,両者を合わせると,悪性新生物(がん)に次ぐ死亡原因となっており,年間33万人以上の国民が亡くなっています.

2022年版「救急・救助の現況」2)によると,2021年中の救急自動車による救急出動件数のうち,最も多い事故種別は急病(全体の65.5%)です.急病の疾病分類では,脳血管疾患が7.5%および心疾患等が8.9%と循環器系が多く(図1),全体の16.4%を占め,特に高齢者ではその割合が高くなっています.

さらに,2022年「国民生活基礎調査」3)によると,介護が必要となった主な原因に占める割合は,脳血管疾患(脳卒中)が16.1%と認知症の16.6%に続き第2位であり,心疾患(心臓病)は5.1%となっています(図2).

また,2020年度版「国民医療費」4)の概況によると,傷病分類別医科診療医療費30兆7,813億円のうち,循環器系の疾患が占める割合は6兆21億円(19.5%)と最多であり,うち脳血管疾患は,1兆8,098億円となっています.

このように,循環器病は国民の生命や健康に重大な影響を及ぼすとともに,社会全体にも大きな影響を与える疾患です.

こうした現状にかんがみ,誰もがより長く元気に活躍できるよう,健康寿命の延伸等を図り,あわせて医療および介護負担を軽減するため,予防や医療および福祉に係るサービスの在り方を含めた幅広い循環器病対策を総合的かつ計画的に推進することを目的として,「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中,心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(平成30年法律第105号)が2018年12月に成立し,2019年12月に施行されました.これを踏まえ,第1期循環器病対策推進基本計画が2020年10月に策定され,さらに,都道府県においても,都道府県循環器病対策推進計画の策定が進められました.2023年3月には,第2期循環器病対策推進基本計画が策定されています.

脳卒中の医療の流れと特集のねらい

脳卒中の医療の流れを示したものでわかりやすいのは,Advanced Cardiovascular Life Support Provider Manual5)に記載されている「脳卒中治療の8つのD」です().脳卒中に対する医療は病院前からはじまっています.皆さんには,救急隊が行う「Dispatch」や「Delivery」を知ってもらい救急車を受ける際に役立てることや,救急外来での「Door」,「Data」,「Decision」,「Drug/Device」を理解しそれを臨床の場で実践すること,その後の「Disposition」にも意識をもってもらいたいと考えています.

2023年8月,「脳卒中治療ガイドライン2021」〔改訂2023〕が日本脳卒中学会より発行されました.「脳卒中治療ガイドライン2021」から治療推奨度が一部改訂されています.

今回,この特集をさせていただいた目的は,超高齢社会のなかで医療や保健・福祉に与える影響の大きい循環器病,特に脳卒中の医療全体における位置づけと,搬送前ならびに救急外来での評価の流れと治療方針,全身管理,リハビリテーションの状況などを,すべての医師に知ってもらうことです.ぜひ,明日からの脳卒中診療に役立てていただきたいと思います.

引用文献

著者プロフィール

中村光伸(Mitsunobu Nakamura) 前橋赤十字病院 高度救命救急センター 集中治療科・救急科
役職:高度救命救急センター長 兼 集中治療科・救急科部長
専門:病院前診療,救急医療,集中治療,災害医療
今興味のある事柄:大規模災害時におけるドクターヘリ運用の検討,救急医の働き方改革,救急医療と在宅医療の連携
抱負や読者へのメッセージ:脳卒中は,国民の生命や健康に重大な影響を及ぼす疾患であるとともに,社会全体にも大きな影響を与える疾患です.また,将来,脳卒中の診療にかかわらない科を専攻しても,自分の患者が入院中に脳卒中を起こすこともあると思いますし,当直中には必ず脳卒中にかかわらなければならないと思います.ぜひ,脳卒中に対する医療の流れを理解していただき,脳卒中の患者の予後改善につなげていただけたらと思います.

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