特集にあたって 特集にあたって 榎本 裕(三井記念病院 泌尿器科部長) 頻尿や尿失禁など排尿の問題を抱える患者さんは多く,研修医の皆さんも病棟で患者さんや看護師などから相談を受けることは頻繁にあるでしょう.泌尿器科の教科書を見たり先輩に聞いたりして対応していることと思いますが,本当に正しい評価,正しい処置ができていますか? また,処置の結果をどのように評価すればよいのか,理解できていますか? 指導医の側も泌尿器科医でなければ適切な指導ができていないことが多いように思います. 「排尿の厳密な評価は泌尿器科でなければできない」と諦めていませんか? 例えば頻尿評価の基本ツールは「排尿日誌」と「残尿測定」で,泌尿器科医でなくても(そもそも医師でなくても)できるものです.基本的な評価を行ったうえで必要に応じて泌尿器科に相談するようにしていれば,治療の効果もよりよくわかるようになります. また,尿閉やコアグラタンポナーデ,腎後性腎不全などの病態は,救急で研修医が対応する機会が多いものの,対処の方法や治療選択のやり方を学ぶ機会はなかなかありません. 日常的に悩むことが多い領域であるにもかかわらず,研修医がまとまった知識を得られる書籍や雑誌が少ないため,このたび,あらゆる「尿の問題」を学べる特集を企画しました.研修医や専攻医の指導に第一線であたっているエキスパートの先生に解説をお願いしました. 「泌尿器科医が教える尿の悩みの捉え方」では,排尿にかかわる症状の聴き取り方から基本的な診察・検査の組み立て方までを解説しました.「尿排出障害」,「尿閉」では尿排出のトラブル,「頻尿・夜間頻尿・尿意切迫感」,「尿失禁」では蓄尿のトラブルについて解説しています.「血尿・コアグラタンポナーデ」,「腎後性腎不全」では,救急で遭遇することの多いコアグラタンポナーデと腎後性腎不全について解説しました.「要介護高齢者・認知症患者の排尿」では要介護者・認知症患者の排尿について解説しました.超高齢社会において避けては通れない問題ですが,なかなか学ぶことができないテーマではないかと思います.最後の「排尿ケアチームの役割」では,排尿ケアチームについて解説しました.診療報酬(排尿自立支援加算)がついたことで,多くの病院に排尿ケアチームが設置されたと思いますが,その活動と活用方法についてはあまり知られていないのではないかと思います. 本特集を通じて,研修医の皆さんの尿にかかわる諸問題に対する理解が深まることを期待しています. 著者プロフィール 榎本 裕(Yutaka Enomoto)社会福祉法人 三井記念病院 泌尿器科部長専門分野:泌尿器悪性腫瘍,腎不全多くの研修医,専攻医の指導をするなかで,泌尿器科のアタリマエが他科には浸透していない場面に多く遭遇します.本特集で少しでも多くの研修医に尿のことを理解していただければ嬉しいです.