春の研修医応援企画ドリル祭り2021

症例:胸痛を主訴に救急外来を受診した56歳男性

患者:
56歳男性
主訴:
胸痛
現病歴:
来院当日の夕方から急に前胸部痛が出現し,様子を見ていたが30分以上経っても改善がないため救急外来を受診.特に外傷をうけた記憶はない.
既往歴:
高血圧
内服:
アムロジピン 1回5 mg 1日2回(朝夕食後)
喫煙歴:
20本/日×36年間
飲酒歴:
なし
バイタルサイン:
体温36.5℃,血圧130/80 mmHg,脈拍数65回/分,呼吸数16回/分,SpO2 98%
この患者で必ず聴取しなければならないことはどれか?
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解答

ⓒ 痛みが出たときに何をしていたか

1. 問題1の解説:致死的な疾患を見つけるためには発症様式が重要

患者が胸痛を主訴に受診したとき,まずは致死的疾患を除外することが必要です.胸痛を訴える致死的疾患に共通する病態生理として,何かが「詰まる」「裂ける」「破れる」ことが起きていることがあげられます.

代表的な疾患として5 killer chest painと呼ばれる急性冠症候群,肺動脈血栓症,大動脈解離,食道破裂,緊張性気胸を必ず覚えておきましょう.

「詰まる」「裂ける」「破れる」ことは瞬間的に起きることであり,致死的な疾患を見つけるためには発症様式が少なくとも急性であることが特徴となります.なかでも気胸や大動脈解離,食道破裂は「突然」発症するものなので本当に突然かどうかを入念に聴取することが重要です(●ここがピットフォール参照).一方,急性冠症候群は詰まった後に心筋に虚血が生じることで痛みが生じるため,症状の立ち上がりがややゆっくりしていることが多くみられます.そのため「突然にはなりにくい」ことを知っておきましょう.

また,痛みの性状や放散痛の有無などを聴取することで鑑別疾患を絞り込むことができます.冷や汗や嘔吐などの自律神経症状は心筋梗塞の可能性を上げる情報とされています(それぞれオッズ比5.18, 3.10)1).こうした情報は,OPQRSTといった病歴聴取のフレームワークを使って抜けなく漏れなく収集していきましょう.

症例の続きとして,この患者のOPQRSTを表1に示しています.

表1 本症例の患者の痛みのOPQRST
ここがピットフォール 本当に突然痛くなったかどうかの聞き方 突然発症の痛みかどうかを聴取するときに,「突然痛くなりましたか」と聞くと,本当に立ち上が りが急峻な突然であっても,10 分程度でピークに達した場合でも,患者は「はい」と答えます. こうしたことは特にclosed question で起きやすく,医療者と患者の間で「突然」のもつイメー ジが異なることに起因します.そうしたミスコミュニケーションを防ぐためには「痛みが出たと きに何をしていましたか?」「何時何分に一気にピークになりましたか?」といったように,発症 したその瞬間がイメージしやすい質問をするとよいでしょう.

引用文献

  1. Body R, et al:The value of symptoms and signs in the emergent diagnosis of acute coronary syndromes. Resuscitation, 81:281-286, 2010

(2021/05/17公開)

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