春の研修医応援企画ドリル祭り2021

生来ある下肢の皮疹

症例

生後8日の女児.母親に同症あり.出生時より,下肢に線状に配列する紅斑・水疱があり,やがてびらん・痂皮を示すようになった.

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解答

ⓒ 眼病変を合併しやすい
ⓔ 皮疹はやがて自然消褪する

皮疹の診かた

  • 右下肢にBlaschko線に沿って線状に配列する水疱・びらん・痂皮が見られる

臨床診断へのアプローチ

  • 生後間もない女児に発症しており,家族歴と特徴的な皮疹を併せて色素失調症を想起する
本症例の診断:色素失調症

疾患の概要

  • 出生時よりBlaschko線に沿って,紅斑・水疱→角化性丘疹→色素沈着→消褪という特徴的な経過の皮疹を生じる
    • 皮膚症状は,第Ⅰ~Ⅳ期に分類される(表1
  • X染色体優性遺伝の形式をとり,男児例のほとんどは胎生致死するため,報告例の95%以上は女児である
    • 本疾患に罹患している母親が妊娠した場合,女子の半数が発症する
  • Xq28に存在するIKBKGNEMOとも呼ばれる)遺伝子の異常によって生じ,NF-κBのシグナル伝達経路が障害されて発症する1)
  • しばしば,歯,眼(選択肢ⓒ),中枢神経などの異常を合併する(表2

治療のポイント

  • 皮膚病変に関しては多くの例で自然消褪する(選択肢ⓔ)ため,必要に応じて対症療法を行う
  • 眼病変,中枢神経病変,骨格異常の早期発見に努める
  • 本疾患におけるIKBKG遺伝子変異の60~80%は,exon 4〜10までの大規模欠失である1)

文 献

  1. Smahi A, et al:Nature, 405:466-472, 2000

(2021/11/17公開)

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