小児薬に関する問題 症例 0 歳1カ月男児,体重4kg 来院前日からの発熱を主訴に救急外来を受診した.発熱の精査で導尿を行ったところ,尿白血球50~99/HPFと膿尿があり,尿グラム染色でグラム陰性桿菌を認めた.入院のうえ,抗菌薬を開始する方針となった. 抗菌薬の投与経路は次のいずれが妥当か,1つ選べ. ⓐ経口投与 ⓑ静脈内投与 ⓒ筋肉内投与 ⓓ皮下投与 どの抗菌薬を選択するか,1つ選べ. ⓐペニシリン系抗菌薬のアンピシリン ⓑセフェム系抗菌薬のセフォチアム ⓒカルバペネム系抗菌薬のメロペネム ⓓフルオロキノロン系抗菌薬のレボフロキサシン ⓑ静脈内投与 腎盂腎炎の経験的治療(empiric therapy)に関して,海外のガイドラインでは経口抗菌薬の有効性は静注抗菌薬と同等である1)としている.一方,国内のガイドラインでは一般的には点滴静注薬による初期治療を行うべき2)としており,本症例のような早期乳児の場合には静注による抗菌薬治療が選択される. 尿路感染症は1歳未満の小児によくみられ,本症例のように “生後3カ月未満の発熱” におけるワークアップによって診断されることが珍しくない.新生児期を過ぎて,全身状態およびバイタルサインが安定している場合は基本的に血液検査・尿検査を行う.尿培養は導尿により採取する必要がある.また,小児では静脈路確保の際に血液培養を採取し,抗菌薬の経静脈投与を開始することが多い. ⓑセフェム系抗菌薬のセフォチアム 上部尿路感染症(腎盂腎炎)では大腸菌を主なターゲットとしており,一般にセフェム系抗菌薬が選択される.本症例では第二世代のセフェム系抗菌薬であるセフォチアムを選択肢としてあげたが,医療施設によってどの抗菌薬を選択するか異なるので確認してほしい. 選択肢ⓐ:アンピシリンは大腸菌に対する感性率が低く,empiric therapyとして選択する機会は少ない.尿グラム染色でグラム陽性球菌が確認された場合は,腸球菌を想定してアンピシリンを選択することがある. 選択肢ⓒ:メロペネムは非常に広域なスペクトラムを有する抗菌薬であり,腎盂腎炎で使用する機会は少ない.菌血症・髄膜炎を合併しているなどの重症例で耐性菌〔主にESBL(extended spectrum β-lactamase:基質拡張型β-ラクタマーゼ)産生菌〕の関与が疑われる場合に使用することがある. 選択肢ⓓ:レボフロキサシンは小児において禁忌であり,専門医が必要と判断した場合を除いて原則使用しない. 引用文献 Roberts KB:Urinary tract infection:clinical practice guideline for the diagnosis and management of the initial UTI in febrile infants and children 2 to 24 months. Pediatrics, 128:595-610, 2011(PMID:21873693) 山本新吾,他:JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015―尿路感染症・男性性器感染症―.感染症学雑誌,90:1-30,2016(2023年12月閲覧) 2024/03/14 公開 トップに戻る