小児薬に関する問題 症例 2歳男児,体重12 kg 牛乳アレルギーと診断されていた.レモンシャーベットを食べた30分後に全身の瘙痒感があり,見てみると全身が赤くなっていた.また,同じ頃から咳嗽も出現したため救急外来を受診した.シャーベットの原材料を確認すると牛乳の記載があった. 症例のABCDEアプローチ A(気道) 吸気性喘鳴あり B(呼吸) 呼吸数40回/分,胸骨上窩と肋間に中等度の陥没呼吸あり,往復性喘鳴あり,エア入り両側やや低下,SpO2 92%(室内気) C(循環) 心拍数140回/分,チアノーゼなし,冷感なし,橈骨動脈触知良好,CRT1秒,血圧90/60 mmHg D(神経) GCS E4V4M6(不機嫌).瞳孔3 mm/3 mm対光反射迅速/迅速 E(全身観察) 全身に地図状の紅斑あり,一部膨隆している.体温36.5℃ SpO2:経皮的動脈血酸素飽和度,CRT:capillary refill time,GCS:Glasgow Coma Scale まず投与する薬剤は何か,1 つ選べ. ⓐアドレナリン0.12 mg 筋肉注射 ⓑアドレナリン0.12 mg 静脈注射 ⓒクロルフェニラミン(H1抗ヒスタミン薬)2 mg 静脈注射 ⓓメチルプレドニゾロン12 mg 静脈注射 ⓐアドレナリン0.12 mg 筋肉注射 本症例では急速に生じた皮膚+気道+呼吸症状・徴候があり,後述する診断基準1を満たしアナフィラキシーと診断される1,2).また,既知の牛乳アレルギーがありアレルゲンを摂取したあと気道,呼吸症状・徴候を急速に発症しており診断基準2も満たす. アナフィラキシーの治療の第一選択薬はアドレナリン 0.01 mg/kg(最大投与量:成人 0.5 mg,小児 0.3 mg)筋肉注射である.診断基準はあるが,状態が悪化している途中では症状が乏しいこともある. “迷ったら打つ” が原則である. H1・H2抗ヒスタミン薬,ステロイドはアナフィラキシーに対して有効であるというエビデンスは乏しい3).もし投与するとしても,これらを投与するためにアドレナリン筋肉注射が遅れてはならない. 引用文献 日本アレルギー学会:アナフィラキシーガイドライン2022(2023年12月閲覧) Cardona V, et al:World allergy organization anaphylaxis guidance 2020. World Allergy Organ J, 13:100472, 2020(PMID:33204386) Shaker MS, et al:Anaphylaxis-a 2020 practice parameter update, systematic review, and Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluation(GRADE)analysis. J Allergy Clin Immunol, 145:1082-1123, 2020(PMID:32001253) 2024/03/22 公開 トップに戻る