春の研修医応援企画ドリル祭り2020

症例:嘔気を訴える若年女性

特に既往のない20歳女性.朝から嘔気があり腹痛も自覚していた.様子をみていたが改善しないため救急要請.生物は摂取していない.旅行には行っていない.周囲に同様の症状なし.

バイタルサイン:意識清明,血圧138/50 mmHg,心拍数130 回/分,呼吸数26 回/分,SpO2 99%(room air),体温37.5℃,瞳孔径3.0/3.0 mm,対光反射 +/+.

腹部全体に軽度圧痛あり.

問題1:この患者さんにまず行うべき検査はどれか?
解答へ
解答

ⓐ 血液ガス検査

● 問題1の解説:“ヤバイ”ものから考える

嘔気と腹痛の原因は腸管にありそうだということで,腹部エコーを当てたくなるかもしれませんし,自信がなければ腹部CTを撮りたくなるかもしれませんね.しかし,まずはバイタルサインに着目してみましょう.頻脈と頻呼吸があり,ただならぬ気配を醸し出しています.これはすべての症候についていえることですが,救急では鑑別は“ヤバイ”ものから順に考え,次いで頻度を考慮し,身体診察と検査結果をもとに診断につなげていく必要があります.この患者さんでは血圧が保たれているようですが,脈圧は開大しています.もしかしたらショック状態なのかもしれません.そして酸素化が良好なのにもかかわらず頻呼吸です.つまり,頻呼吸にならなければならない病態が隠れているはずです.気道,呼吸,循環の安定化と,診断を同時に進めなくてはならないのが救急の大変なところであり,おもしろいところでもあります.

では最初の一手をどうするかですが,呼吸・代謝がうまくいっているのか,酸塩基平衡はどうなっているのかということを同時に確認できるのが血液ガス分析というわけです.呼吸がおかしい患者さんをみたら,血液ガス検査を考慮してください.できるかぎり,動脈血で検査をすると,正確な評価ができます.もしショックが疑われるならば,ショックの原因検索にエコーが有用です(RUSHプロトコル1)を知っておいてほしいですが,本稿では割愛します).

引用文献

  • Perera P, et al:The RUSH exam:Rapid Ultrasound in SHock in the evaluation of the critically lll. Emerg Med Clin North Am,28:29-56,vii,2010(PMID:19945597)

(2020/4/6公開)

この"ドリル"の掲載書をご紹介します