画像診断Q&A

レジデントノート 2012年10月号掲載
【解答・解説】息切れで受診し,胸水貯留を認めた1例

Answer

良性石綿胸水の1例

  • A1:図1では大量な左胸水貯留が認められる.しかし,縦隔の右方偏移はほぼない.石灰化胸膜斑が左右の胸壁,横隔膜面,心膜面に認められることから石綿関連疾患と考えられる.
  • A2:アスベストの吸入歴.
  • A3:経過,細胞診などから,良性石綿胸水を第一に考える.悪性胸膜中皮腫や結核性胸膜炎を鑑別する.

解説

本症例は胸部X線像 (図1) で胸膜 (→①),横隔膜(→②),心膜面(→③)の石灰化胸膜斑が明らかであり,石綿関連疾患であることは容易に推測できる.胸部CT像 (図23) でも明らかである.また,過去に同様の原因不明の胸水の貯留があり,同じ病態をくり返していたものと考えられる.この経過と,ヒアルロン酸やCYFRA21-1の低値などから悪性胸膜中皮腫は否定的であり良性石綿胸水と推測される.

良性石綿胸水は,石綿による胸水貯留を主徴とする疾患と定義され,① 明確な石綿曝露歴,② 胸水の確認,③ 他の原因の除外,④ 悪性腫瘍の否定によって診断される.他疾患を除外して,3年以上1),あるいは1年以上2)の経過を観察できたものとされている.一般的な良性石綿胸水の性状は,① 肉眼的に血性(半数以上),② 細胞診は陰性,③ 滲出液,④ 好酸球増多 (25%以上),⑤ ヒアルロン酸<10万ng/mLである.

胸水ドレナージを施行して再度同様の検査を行ったが結果は同様で特異的な検査結果は得られなかった.また,結核性胸膜炎の否定のために,前医から処方された抗結核薬を6カ月継続使用したがそれによる改善はみられなかった.

石綿関連疾患は,① 石綿肺(肺の線維化),② びまん性胸膜肥厚,③ 良性石綿胸水,④ 肺がん,⑤ 中皮腫に分けて考えられ,多くは石綿吸入歴が明らかである.本症例の職歴は,20年間くらい機械の据え付け,下水処理場の排水ポンプなどの配管の仕事に従事したということである.石綿の直接の吸入歴はないが,よく聞くと,石綿を吹き付けた直後,あるいは石綿を剥がした直後の部屋で作業をしたことがあり,やはり吸入歴はあったと考えられる.

その後肺機能は徐々に低下し,在宅酸素療法で外来診療を継続している.本来は石綿による健康被害の補償の対象であろうが本人と家族の意思で申請はしていない.

図1 来院時胸部X線写真 図2 胸部CT 写真 縦隔条件 図3 胸部CT写真 縦隔条件(図2より頭側)

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文 献

  1. Epler, G. R., et al.:Prevalence and incidence of benign asbestos pleural effusion in a working population. JAMA,247:617-622,1982
  2. Hillerdal, G. & Ozesmi, M.:Benign asbestos pleural effusion: 73 exadates in 60 patients. Eur J Respir Dis,71:113-121,1987

プロフィール

山口 哲生(Tetsuo Yamaguchi)
JR東京総合病院呼吸器内科
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