胆嚢捻転症は,60歳以上の高齢者女性に多いとされ(60歳以上の高齢者の割合と女性の占める割合がともに75%以上),無石性のものが多く,先天的に遊走胆嚢があること,痩せ型,亀背,内臓下垂を伴うことなどが要因とされる.胆嚢頸部の捻転による血流障害から胆嚢壁の壊死に至るために,早急に外科手術を行う必要がある.手術が適切に施行されれば,死亡率は3~5%程度であるが,高齢者に多いために治療の遅れはしばしば致命的となる.従来,臨床的に急性胆嚢炎と区別しがたく診断が困難とされていたが,超音波やCTなどの画像検査により早期診断が可能となってきた.胆嚢捻転症のCT所見としては,胆嚢の腫大・緊満(図3)や胆嚢壁の浮腫などの急性胆嚢炎と共通の所見のほかに,胆嚢頸部の狭小化と捻転部高吸収域,胆嚢壁造影不良,胆嚢の偏位 (正中や下方) があげられている.これらに加え,本症例のように,薄いスライスの観察や再構成画像の作成により捻転部を直接同定し,診断確定に至る症例の報告も散見されるようになってきた. 治療は胆嚢摘出術であり,緊急もしくは待機的に行われる.肝床付着部が小さいという本症の特徴からは腹腔鏡下手術も有用と考えられる.
本症例では,CTにて胆嚢捻転症の診断が確定し,緊急手術が施行された.その後の経過は良好で2週間ほどで退院となっている.
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胆嚢捻転症は,稀ではあるが,老人性亀背を有するやせ形女性の急性腹症では念頭におくべき疾患の1つである.胆嚢壊死をきたすために診断の遅れはしばしば致命的である.臨床の現場では特に急性胆嚢炎と紛らわしく,急性胆嚢炎ならドレナージ,胆嚢捻転症なら緊急手術の適応であり,治療方針が異なるので両者の鑑別は重要である. 近年多列CTの普及により薄いスライスでの撮像や,矢状断・冠状断などの再構成画像により,本症例のごとく捻転自体を同定することが可能になり,CTは確定診断の有力な手段となっている.造影まで行うと胆嚢の虚血や壊死などの評価が可能であり,治療の緊急度の評価にも有用である.
〔 2009年度当院放射線科研修医 末竹荘八郎先生作成ティーチングファイルを改変しました〕