画像診断Q&A

レジデントノート 2012年12月号掲載
【解答・解説】血管性病変が原因である急性腹症の1つです

Answer

孤立性上腸間膜動脈解離

  • A:腹部単純CT (図1) にて,上腸間膜動脈は拡張し,壁に沿って高吸収域を認める ().造影CT (図2) にて,単純CTの高吸収域に一致して三日月状の非造影域を認め (),上腸間膜動脈壁内血腫と考える.上腸間膜動脈解離と診断した.他のスライスで腸管の造影効果は保たれており腸管虚血の所見は認めなかった.3週間後の造影CT (図3) では壁内血腫の退縮が認められた ().

解説

孤立性上腸間膜動脈解離とは上腸間膜動脈に限局した動脈解離と定義され,大動脈解離に合併する上腸間膜動脈解離とは区別される.病因としては多くが不明で特発性とされているが,病理学的に限局性の動脈中膜壊死(segmental arterial mediolysis:SAM)が特徴的で,何らかの動脈壁の退行性変化が関与していると考えられている.従来,稀な病態とされていたが,CTなど画像診断の普及に伴い近年報告例は増加している.症状の多くは突然の腹痛,下痢,嘔吐であるが,消化管出血も一部にみられる.

画像診断はCTが有用である.上腸間膜動脈解離のCT所見には2種類あり,1つはflapが同定され,二腔構造が明らかなもので,もう1つは,当症例のように,二腔構造は認めず,壁内血腫の所見を呈するものである.後者では,壁内血腫が薄い場合には見落としやすく注意が必要である.特に単純CTにおけるリング状の高吸収域が新鮮血腫を示している点で診断価値が高い(図1).同時に造影CTにおける腸管の造影効果など腸管虚血の有無にも注意を払わねばならない.

治療方針について,腸管壊死や穿孔,出血などを合併し緊急手術が必要な重篤な症例もあれば,一方では,当症例のように保存的に治療可能で解離腔の自然退縮が期待できる症例もあり(図3),一定の見解は得られていない.当症例のように,CTや血液・生化学検査で腸管虚血の所見が認められない場合は経過観察も選択可能であろう.

図1 来院時腹部単純CT 図2 来院時腹部造影CT 図3 3週間後の腹部造影CT

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<症例のポイント>

血管性病変が原因である急性腹症のなかで,代表的なものは上腸間膜動脈塞栓・血栓症であるが,今回取り上げた上腸間膜動脈解離も忘れてはならない疾患である.上腸間膜動脈解離のなかには腸管壊死や穿孔,出血などを合併し緊急手術が必要な重篤な症例もあり,早期診断が重要である. 診断の主役はCTで,単純と造影の両方を撮像する.CT読影に際して上腸間膜動脈を注意深く観察する必要がある.特に,当症例のように,壁内血腫のタイプは見逃されやすいので注意が必要である.単純CTにおけるリング状の高吸収域が診断のポイントである(図1

〔2007年度当院放射線科研修医 森 源喜先生作成ティーチングファイルを改変しました〕

プロフィール

松岡 陽治郎(Yohjiro Matsuoka)
国立病院機構長崎医療センター放射線科
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