気管支鏡検査で右下葉気管支B10よりTBLB(transbronchial lung biopsy:経気管支肺生検)を行い,肺腺癌と診断された.
CDDP(シスプラチン)75 mg/m2,PEM(ペメトレキセド)500 mg/m2,Bev(ベバシズマブ)15 mg/kg,の化学療法(chemotherapy)を28日1コースとし,計4コース施行したが不変であり,EGFR遺伝子変異が陽性であったことからゲフィチニブ250 mg/日を投与したところ著明改善を得た.
本症例では全肺野にびまん性に粒状影を認める点で,粟粒結核と悪性腫瘍の血行性転移との鑑別が重要である.
粒状影がランダムに分布する点は,粟粒結核と悪性腫瘍の血行性転移にいずれも共通している.しかし,粟粒結核では発熱を認める例が90%あるが,本症例は発熱が認められていない. また,HRCTでみると,粟粒結核がほぼ一様な小粒状陰影を呈するのに比べて,本症例では小結節陰影に大小不同が認められる (①→ やや大きめの結節,②→ 小さい結節,③→ 結節の癒合).以上の2点から粟粒結核よりも悪性腫瘍の肺内転移をまず疑うべきである. 実際,TBLBで肺腺癌が証明された.また,右下葉の大きな結節状陰影は原発巣と考えられるが,2つある理由は不明である (④→).
治療は一般に化学療法が施行されるが予後不良のものが多い.本症例はCDDP,PEM,Bevでは無効であったが,ゲフィチニブ投与で著効を得た(図4).図4では,全肺野の結節状陰影は消失しているが,右下肺野の2つの結節状陰影は淡くなっているもののまだ残存している.
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