画像診断Q&A

レジデントノート 2012年12月号掲載
【解答・解説】咳嗽を契機に胸部異常陰影を指摘された60歳代女性

Answer

多発肺内転移の肺腺癌の1例

  • A1:両側びまん性に小結節陰影の散布を認める.右下肺野横隔膜上に,境界が不明瞭で内部が不均一な2個の結節影を認める(図1).肋骨横隔膜角(costophrenic angle:CPA)はsharpであり,胸水を認めない.心拡大もみられない.
  • A2:胸部CTでは,両側びまん性に小結節状陰影が認められる.上肺野(図2)と下肺野(図3)のHRCTを示す.結節状陰影の分布としては,小葉構造との関係は分布に一定の傾向をもたず,ランダムである胸膜直下葉間胸膜 (右中葉と下葉の胸膜)にも分布している点から,血行性に広がる疾患が疑われる.そのほかに右下葉S9に26×24 mm大の結節を,S10に22×20 mm大の結節を認める (④→ ) 点から,原発性肺癌の多発肺内転移が疑われる.

    気管支鏡検査で右下葉気管支B10よりTBLB(transbronchial lung biopsy:経気管支肺生検)を行い,肺腺癌と診断された.

  • A3:対側肺にも多数の腫瘍結節を認めており,cT1bN3M1のステージⅣの癌であった.

    CDDP(シスプラチン)75 mg/m2,PEM(ペメトレキセド)500 mg/m2,Bev(ベバシズマブ)15 mg/kg,の化学療法(chemotherapy)を28日1コースとし,計4コース施行したが不変であり,EGFR遺伝子変異が陽性であったことからゲフィチニブ250 mg/日を投与したところ著明改善を得た.

解説

本症例では全肺野にびまん性に粒状影を認める点で,粟粒結核悪性腫瘍の血行性転移との鑑別が重要である.

粒状影がランダムに分布する点は,粟粒結核と悪性腫瘍の血行性転移にいずれも共通している.しかし,粟粒結核では発熱を認める例が90%あるが,本症例は発熱が認められていない. また,HRCTでみると,粟粒結核がほぼ一様な小粒状陰影を呈するのに比べて,本症例では小結節陰影に大小不同が認められる①→ やや大きめの結節,②→ 小さい結節,③→ 結節の癒合).以上の2点から粟粒結核よりも悪性腫瘍の肺内転移をまず疑うべきである. 実際,TBLBで肺腺癌が証明された.また,右下葉の大きな結節状陰影は原発巣と考えられるが,2つある理由は不明である (④→).

治療は一般に化学療法が施行されるが予後不良のものが多い.本症例はCDDP,PEM,Bevでは無効であったが,ゲフィチニブ投与で著効を得た(図4).図4では,全肺野の結節状陰影は消失しているが,右下肺野の2つの結節状陰影は淡くなっているもののまだ残存している.

図1 入院時胸部X線写真 図2 上肺野HRCT像 図3 下肺野HRCT像 図4 ゲフィチニブ治療後の下肺野胸部CT像

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プロフィール

槇田 広佑(Kosuke Makita)
JR 東京総合病院呼吸器内科
山口 哲生(Tetsuo Yamaguchi)
JR 東京総合病院呼吸器内科
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