画像診断Q&A

レジデントノート 2014年2月号掲載
【解答・解説】認知機能障害の原因は?

Answer

Creutzfeldt-Jakob病(CJD)

  • A:FLAIR像は動きによるアーチファクト(モーションアーチファクト)があり,画質が低下しているが,左尾状核頭に高信号が認められる(図1).
    拡散強調像で両側前頭葉,頭頂葉の皮質や左尾状核頭部に異常信号を認める(図2).また,軽度のびまん性の脳萎縮も認められる.
    拡散強調像の異常信号が基底核や大脳皮質にみられ,特徴的なその分布からCJDが強く疑われる像である.

解説

CJDは別名プリオン病として知られ,感染性のある異常プリオンタンパクの中枢神経沈着により生じる.CJDは以下の4つのタイプに分類されている.特発性(sporadic, sCJD),家族性(familial),医原性(iatrogenic),そして変異型(variant, vCJD)である.おおよそ85%がsCJDとされ,本症例も既往や髄液検査などからsCJDと診断された.

sCJDは初老期に好発し,急速に進行する認知機能障害に引き続き,ミオクローヌス,無言無動症をきたす.精神・高次機能障害,運動失調など広範な中枢神経系の障害からやがて死の転帰をとる.診断後の中央生存期間は約4カ月間である.

CJDの診断には,かつては髄液の14-3-3 タンパクや脳波の周期性同期性放電(periodic synchronous discharge:PSD)の所見が重要とされており,診断基準に画像所見は含まれていなかった.しかしPSD の感度は40〜67%と低く,病後期にならないとPSD が現れない.また,髄液所見の感度は約85%と高いがそのほかの脳症でも陽性となることがあり,特異度は低いとされる.近年MRI の普及によりCJDの診断におけるMRI 検査の有効性が知られるようになり,特に拡散強調像は高い感度(86〜94%)を示し,病初期の段階で軽微な症状であってもほかの検査に先駆けて異常所見を検出できることから診断に有用とされる.現在ではCJDの診断は症状,画像所見,髄液所見,脳波所見を総合的に評価する新しい診断基準が提唱されている.

CJDの場合,MRI では拡散強調像やT2 強調像にて大脳皮質,基底核,視床に高信号を呈する.拡散強調像はT2強調像に先行して異常所見を呈し,また高速で撮影できることからミオクローヌスの存在する症例でも良好な画質を得ることができ有用である.CJDの患者は認知症やミオクローヌスなどの不随意運動により検査時の安静を保つことが難しい.そのため,従来のT2 強調像やFLAIR 像でモーションアーチファクトを認めるが,拡散強調像では明瞭な画質が得られていることがCJDの所見とする報告もある1)

CJDは主に灰白質を侵す疾患であり,白質は保たれる傾向にある.CTでは萎縮のない病初期には正常像を呈する.しかし,経過観察すると脳萎縮が急速に進行する.

鑑別疾患として,ほかの認知機能障害をきたす疾患(Alzheimer病や前頭側頭型認知症)があげられるが,基底核病変や拡散強調像での異常信号の有無が鑑別のポイントになる.

図1 来院時MRI,FLAIR 像
図2 来院時MRI,拡散強調像(基底核のレベル)
図3 来院時MRI,拡散強調像(半卵円中心のレベル)

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<症例のポイント>

拡散強調像での皮質・基底核に病変をみたときはCJDの可能性を考えよう.

文献

  1. Shimono, T., et al.:Discordance of motion artifacts on magnetic resonance imaging in Creutzfeldt-Jakob disease:comparison of diffusion-weighted and conventional imaging sequences. Radiat Med, 26:151-155, 2008

プロフィール

田村 謙太郎(Kentaro Tamura)
慶応義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎 雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶応義塾大学医学部 放射線診断科
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