画像診断Q&A

レジデントノート 2014年3月号掲載
【解答・解説】誘因なく発生した左側腹部痛

Answer

腎被膜下血腫

  • A:左腎周囲に高吸収域を認める(図1).CT値は65HU であり,血腫と考えられる.血腫は左腎を取り囲むような三日月状の形状をしており,腎被膜下血腫とわかる.前腎筋膜(図1)やbridging septa(図1)は肥厚している.

解説

腎臓は副腎や周囲脂肪織とともに,前腎筋膜(Gerota 筋膜)および後腎筋膜(Zuckerkandl 筋膜)で囲まれる腎周囲腔という領域に位置する(図2).この部位に生じた血腫は,血腫の場所によって腎実質内血腫,腎被膜下血腫,腎周囲血腫に分類される.腎被膜下血腫は腎被膜と腎実質の間に生じるもので,腎周囲を取り囲むような三日月状の血腫がみられるのが特徴である.血腫は単純CTで高吸収を呈し,60 ~ 90HU のCT値を示すことから腎実質と区別することができる.

腎被膜下血腫は稀な病態であるが,その原因はさまざまなものがある.外傷をはじめとして,腫瘍からの出血,体外衝撃波結石破砕術(extracorporeal shock wave lithotripsy:ESWL)の合併症,腎血管病変,感染症,生検やカテーテル検査など医原性の症例のほか,原因のはっきりしない特発性のものもある(図3).いずれの場合にも初発症状として側腹部痛は必発である.その他の症状には側腹部での腫瘤触知,嘔気,ふらつき,血圧低下などがある.

本症の診断においては画像検査の占める役割が大きく,その第1選択はCT検査である.血腫の診断に加えて,血腫の原因を特定するために単純+ dynamic 造影検査を行うことが望ましい.CTで出血の原因となる腫瘍や動脈瘤,活動性出血などの所見が認められれば,手術や経カテーテル動脈塞栓術,経過観察といった治療に移ることになる.ただし,初回CTでは約半数の症例で血腫の原因がはっきりしないといわれており,follow-up CTを撮影することが重要である.また,CTで出血源が判然としない場合にはMRI も考慮される.

本症例では救急外来における超音波検査で腎周囲の液体貯留が疑われ,造影CTが施行された.経過観察し血腫は縮小したが,原因は不明であり,特発性腎被膜下血腫と考えられた.本症例のように誘因なく側腹部痛が生じた場合は,腎被膜下血腫を鑑別にあげ,疑わしい場合はCT検査を行うとよい.その際は必ず単純CTを撮影し,可能ならばdynamic 造影検査も追加することが重要である.

図1 腹部単純CT
図2 腎周囲腔の解剖
図3 腎被膜下血腫の原因

クリックして拡大

文献

  1. 「 腹部CT診断120ステップ」(荒木 力/著),pp.256-259,中外医学社,2002
  2. Zhang, J. Q., et al.:Etiology of spontaneous perirenal hemorrhage:a meta-analysis. J Urol, 167:1593-1596, 2002

プロフィール

荒井 学(Manabu Arai)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
田村 謙太郎(Kentaro Tamura)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎 雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
サイドメニュー開く

TOP