両側中下肺野に線状影を伴う浸潤影があります.CRP正常なので感染症ではなさそうです.病歴から薬剤性を疑います.
胸部単純X線写真では両側に不整形の浸潤影を認め(図1◯),浸潤影は胸膜陥入像や線状影を伴い(図1→),強い収縮傾向を示唆している.胸部CTでは,比較的中枢側から肺野中間層にかけて気管支血管束沿いに気管支透亮像のある不整形な浸潤影が多発している(図2◯).胸膜に達する浸潤影(図2 B◯)も認める.1つの陰影の範囲は区域を越えていて非区域性である.
胸部CT 所見は器質化肺炎パターンで,非区域性の分布から経気道性の感染症などは考えにくい.本例では病歴から薬剤性を最も疑った.
薬剤性肺障害は種々の病理組織像を呈することが知られ,また,それに対応する画像所見もさまざまである1).したがって,薬剤性肺障害は,画像所見,病理所見のみでは診断することができない.しかし,画像所見でびまん性の陰影を呈する場合は鑑別診断として必ず薬剤性肺障害を考慮する.薬剤性肺障害の診断基準は,① 原因となる薬剤の摂取歴,② 薬剤に起因する臨床病型の報告の存在,③ ほかの原因疾患の否定,④ 薬剤の中止またはステロイドによる病態改善,⑤ 薬剤の再投与による増悪,とされる.診断には薬剤性肺障害を疑うことが重要で,サプリメントなども含む薬剤摂取の病歴の聴取を行い,また,文献,ウェブサイト2)等を用いて薬剤による肺障害の報告の存在を確認する.薬剤の再投与は行わないことが多い.
本例はただちにメサラジン内服を中止した.また,メサラジン内服前は胸部画像所見に異常がないことが確認された.気管支肺胞洗浄では細胞数が増加し,リンパ球分画51%と増加がみられ,薬剤性肺障害に矛盾しない所見と考えた.本例はステロイド投与により,一部瘢痕を残して軽快した.メサラジンの再投与は行わず,病歴,治療反応性からメサラジンによる薬剤性肺障害と診断した.
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