画像診断Q&A

レジデントノート 2015年3月号掲載
【解答・解説】しびれの原因を探る!

Answer

亜急性連合性脊髄変性症

  • A1:頸髄後索
  • A2:亜急性連合性脊髄変性症(subacute combined degeneration of the spinal cord:SCDSC)

C2からC4レベルの後索に頭尾方向に連続する対称性のT2WI高信号病変が認められる(図BC).

T1WIでは病変は低信号を呈しており(図A),明らかな異常造影効果は認めない.

胃癌の既往,大球性貧血が存在することを考慮し,ビタミンB12欠乏に伴う亜急性連合性脊髄変性症 (SCDSC)が最も疑われる所見である.この後血清ビタミンB12低値が確認された.

鑑別疾患は多椎体に跨がる病変として脊髄癆(tabes dorsalis)やAIDSに伴う空胞性脊髄症(vacuolar myelopathy),視神経脊髄炎(neuromyelitis optica:NMO),自己免疫性疾患(関節リウマチやSjögren症候群など)が考えられるが,臨床的に否定された.

解説

亜急性連合性脊髄変性症は脊髄側索,後索を中心とした代謝性神経疾患であり,ビタミンB12欠乏が原因とされる.胃切除後の発症が有名であるが,萎縮性胃炎,プロトンポンプ阻害薬の長期服用,慢性アルコール中毒,過度のダイエット,菜食主義など近年ではさまざまな原因が報告されており,同疾患を疑う場合は食事摂取状況を含めた詳細な病歴聴取が必要である.

一般には血清ビタミンB12値が低値を示すことが多いが,これが基準範囲内であっても体組織内のビタミンB12が欠乏することはありうる.このため臨床的に亜急性連合性脊髄変性症を疑う場合は血清ビタミンB12のみならず,血清・尿中メチルマロン酸の測定を行いビタミンB12の組織内欠乏の有無を検索する必要がある.

また,銅欠乏によって生じる銅欠乏性脊髄症もビタミンB12欠乏による亜急性連合性脊髄変性症と酷似した臨床像,画像,病理像を呈することが知られており,銅欠乏も考慮する必要がある.

亜急性連合性脊髄変性症の「連合性」とは後索と側索を示している.後索の障害による深部知覚障害,脊髄性運動失調,側索病変による痙直性麻痺,脱力,深部腱反射の亢進が認められる.症状は数カ月〜数年の単位で緩徐に進行する.治療はビタミンB12の筋注である.早期の治療により症状および画像の改善が認められることが多いが進行すると不可逆性の変化が生じるため早期の診断,治療が肝要である.

画像上は頸髄から上部胸髄の後索を中心に左右対称性のT2WI高信号が認められる.後索の外側にある楔状束が障害され内側の薄束が保たれることから,典型的には逆V字型の高信号となる.

造影効果は本症例のように造影効果がみられないものから軽度の造影効果を呈するものまでさまざまである.

画像上の鑑別となるのが上記の銅欠乏性脊髄症のほかに,ADEM(acute disseminated encephalomyelitis:急性散在性脳脊髄炎)やNMOのような脱髄性疾患やHIV,水痘帯状疱疹ウイルス,ヘルペスウイルス等による感染性脊髄炎,自己免疫性疾患であるが,症状や臨床経過,血液生化学所見から診断に苦慮することは少ないだろう.

図1
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<症例のポイント>

亜急性に進行するしびれ,脱力を呈する患者で頸髄の後索に病変がみられたときは亜急性連合性脊髄変性症を念頭において病歴や経過,食生活を聴取しよう.

血清ビタミンB12や銅,血清・尿中メチルマロン酸の測定により確定診断を下すことができる.

プロフィール

田村 謙太郎(Kentaro Tamura)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎 雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
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