画像診断Q&A

レジデントノート 2015年3月号掲載
【解答・解説】気管支喘息にて通院中の60歳代女性

ある1年目の研修医の診断

右の下肺野に浸潤影を認めます.シルエットサインは陰性のようです.肺炎でしょうか?

Answer

悪性リンパ腫

  • A1:解説に詳細記す.
  • A2:胸部単純CT

解説

胸部単純X線写真では,右中〜下肺野に浸潤影を認める(図1).心右縁にかかっているがシルエットサインは陰性である.したがって病変の部位は心臓より後方(背側)と推測される.

急性炎症を疑う臨床経過がないことから,細菌性肺炎は否定的と考えられる.腫瘍性病変を疑ったが,喘息患者のため造影剤は使用せず胸部単純CTを撮影した.

胸部単純CTでは右下葉の中枢側に腫瘤病変を認める(図2).辺縁は比較的明瞭な部分とすりガラス影を示す部分があり,腫瘍は葉間胸膜に達していたが,胸膜陥入像は認めなかった.また,腫瘍内部に気管支透亮像がみられた(図2).悪性リンパ腫の肺病変は多彩なことで知られているが1)これだけ大きな腫瘤でありながら,気管支が内部で開存しているということは,破壊性ではなく既存構造を残した進展ということであり,これは悪性リンパ腫の大きな特徴である.この点から本例では悪性リンパ腫が最も強く疑われる.ほかに,肺癌(高分化腺癌),クリプトコッカス症などの肺真菌症も鑑別診断としてあげられる.しかし本例は陰影が濃く,腫瘍であれば充実性の発育が疑われるため,その点で上皮置換型の進展をする高分化腺癌は考えにくい.クリプトコッカス症は通常,より末梢側に発生するため,本例とは合わない.気管支鏡検査を行い,病変部の粘膜の生検材料からdiffuse large B cell lymphoma(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)の病理診断を得た.全身検索の結果,病変は胸郭内に限局していたが,腫瘍は気管分岐下リンパ節に連続していたため,外科的切除の適応はないと判断された.その後,血液内科にてR-CHOP療法(リツキシマブ,シクロホスファミド,ドキソルビシン,ビンクリスチン,プレドニゾロン)が行われ,寛解が得られている.

図1
図2
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文献

  1. 酒井文和,他:Topics 1 びまん性肺疾患としての悪性リンパ腫―その画像―.「特集 びまん性肺疾患の画像―多彩なプロファイル―」,日呼吸誌,2:491-497, 2013

プロフィール

大河内 康実(Yasumi Okochi)
東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
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