画像診断Q&A

レジデントノート 2016年5月号掲載
【解答・解説】腹痛の原因は?

Answer

上腸間膜静脈血栓症

  • A1:門脈〜上腸間膜静脈,脾静脈に造影欠損を認める(図123).上行〜横行結腸,回腸遠位に著明な腸管壁の粘膜下浮腫や周囲脂肪組織の濃度上昇を認める(図23).腹水貯留も見受けられる(図13).
  • A2:上腸間膜静脈血栓症を疑い,凝固機能検査を追加する.上腸間膜静脈血栓症には,凝固亢進状態がかかわっていることが多く,本症例では肺動脈塞栓症と下肢静脈血栓症も認めた.プロテインC・S欠乏症,アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)欠乏症といった先天性血栓性素因は認められなかった.

解説

急性腸間膜虚血(acute mesenteric ischemia)には,腸間膜の主要血管の閉塞が認められる動脈塞栓・血栓症や静脈血栓症と,灌流領域の支配血管に明らかな器質的閉塞を認めないが,腸管に虚血がある非閉塞性腸管虚血(non-occlusive mesenteric ischemia:NOMI)がある.

上腸間膜動脈閉塞症は急性腸間膜虚血の代表例として有名で,主に心房細動や弁膜症といった心疾患を起因とする塞栓症と,動脈硬化などの血管病変に基づく血栓症があるが,いずれも急激な腹痛,嘔気,嘔吐などの急性の腹部症状を呈することが多い.これに対し,上腸間膜静脈血栓症では何らかの凝固亢進状態(プロテインC・S欠乏症,ATⅢ欠乏症,真性多血症,妊娠,経口避妊薬服用中,悪性腫瘍など)を有する場合が多く,原因を検索することが重要である.そのほか,門脈圧亢進症,腹腔内炎症病変(憩室炎,虫垂炎,膿瘍など),外科的手術後,腹部外傷などが原因としてあげられる1).急性の腹部症状を呈するものの,動脈閉塞に比べ症状は軽微で緩徐である.静脈血栓症自体の頻度としては急性腸間膜虚血の6〜9%を占め,その多くが上腸間膜静脈に発生する2)

上腸間膜静脈血栓症の診断には造影CTが有用であり,診断精度は約90%といわれている3).CT所見としては上腸間膜静脈壁が造影され,内腔は血栓のため造影欠損(図1図2)を呈する.撮影のタイミングが早く,上腸間膜静脈に造影剤が到達していない場合は,造影されていない静脈を血栓と間違える可能性があるので,後期相での確認が重要である.その他の所見としては,非特異的ではあるが,腸管拡張や腸管壁の肥厚(図2図3)などがある.

急性腹症のCT読影では動脈のみならず,静脈血栓の有無の確認も重要で,静脈血栓症をみた際には凝固異常をきたす原因の検索が必要である.

図1 図2 図3

クリックして拡大

文献

  1. Bradbury AW, et al:Mesenteric ischaemia:A multidisciplinary approach. Br J Surg, 82:1446–1459, 1995
  2. Singal AK, et al:Mesenteric venous thrombosis. Mayo Clin Proc, 88:285-294, 2013
  3. Acosta S, et al:Findings in multi-detector row CT with portal phase enhancement in patients with acute mesenteric venous thrombosis. Emerg Radiol, 16:477-482, 2009

プロフィール

児玉さゆり(Sayuri Kodama)
慶応義塾大学医学部 放射線診断科
松本俊亮(Shunsuke Matsumoto)
慶応義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶応義塾大学医学部 放射線診断科
サイドメニュー開く

TOP