画像診断Q&A

レジデントノート 2016年7月号掲載
【解答・解説】左下腹部痛を主訴とした50歳代男性

Answer

腸回転異常症に伴う虫垂炎

  • A1:回盲部は左下腹部に位置している(図1).その内側から突出する盲端な管腔構造を認め,虫垂(図2)と考えられる.虫垂腫大,壁肥厚を認め,糞石を伴っている. 腹腔内の右側に小腸(図3),左側に結腸(図3)が分布している.十二指腸は水平脚を形成せず,SMA〔superior mesenteric artery:上腸間膜動脈(図4)〕とSMV〔superior mesenteric vein:上腸間膜静脈(図4)〕の位置が逆転している.また,非掲載だが,膵鉤部が低形成であった.
  • A2:腸回転異常症に伴う虫垂炎と診断した.

解説

腸管は発生段階で,前腸・中腸・後腸に分けられ,腸回転異常症に関連するのは中腸である.中腸は近位脚と遠位脚からなり,SMAを中心に270°反時計回転しながら,腹腔内に還納される.この過程に異常が生じたものを,腸回転異常症とよぶ.

本症は発生異常の視点から,無回転型,不完全回転型,不完全固定型の3型に大別される1).無回転型は,回転が90°で停止したもので,右側小腸・左側結腸の分布を示す.合併症が起きにくく,成人まで無症状で経過することが多い.不完全回転型は,さまざまな程度で回転が停止したもので,中腸軸捻転,あるいはLadd靱帯による十二指腸狭窄・閉鎖を生じることがあり,小児期で診断されることが多い.不完全固定型は固定に異常をきたしたもので,右傍十二指腸ヘルニアや移動盲腸などを生じることがある.

虫垂炎は右下腹部痛をきたす疾患として有名であるが,本症例では無回転型の腸回転異常に伴い,虫垂が左下腹部に位置していたため,左下腹部痛を呈したものと考えられる.虫垂炎を伴う腸回転異常症は70%が無回転型であったと報告されている2)

腸回転異常症を示唆するCT所見として,① 十二指腸水平脚の走行異常,② 回盲部の位置異常,③ SMA,SMVの位置が逆転,④ 膵鉤部低形成,⑤ 右側小腸・左側結腸の分布,⑥ 横行結腸がSMA背側に位置,があげられる3).このなかで①・②が重要である.近位脚が正常回転すれば,十二指腸は大動脈とSMAの間を通り水平脚を形成する.遠位脚が正常回転すれば,回盲部は右下腹部に位置する.この2点の位置異常を確認することで腸回転異常が指摘できる.その他の所見は単独では非特異的であるので留意されたい.

腸回転異常症を有する患者では,虫垂炎が右下腹部痛ではなく,非典型的な症状・所見を呈するため注意が必要である.

図1 xxxxxxxx 図2 xxxxxxxx 図3 xxxxxxxx 図4 xxxxxxxx

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文献

  1. 西島栄治:腸管の回転異常症の概念と分類.小児外科,37:749-754,2005
  2. 今泉理枝,他:術前診断した腸回転異常症を伴う成人急性虫垂炎の1例.日本臨床外科学会雑誌,74:3359-3364,2013
  3. 一色彩子,他:腸回転異常のCT診断.画像診断,32:844-861,2012

プロフィール

中澤雄二郎(Yujiro Nakazawa)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
松本俊亮(Shunsuke Matsumoto)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
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