画像診断Q&A

レジデントノート 20xx年xx月号掲載
【解答・解説】3カ月前から続く咳嗽を主訴に来院した 30歳代女性

ある1年目の研修医の診断

胸部単純X線写真にて両側胸水を認める.末梢血で好酸球数上昇を認めることから,好酸球数上昇の原因精査をする必要がある.何らかのアレルギー疾患を疑い,アレルギー歴がないかどうかを病歴聴取で確認する必要がある.次に必要な検査はCTなどで肺野の病変を確認しつつ,胸腔穿刺をして胸水の性状を確認することである.

Answer

ウエステルマン肺吸虫症

  • A1:寄生虫疾患(ウエステルマン肺吸虫症)
  • A2:最近の食事歴の聴取
  • A3:抗寄生虫抗体

解説

末梢血好酸球数上昇を認め,慢性の経過で発症した両側胸水の症例である.好酸球数上昇をきたす疾患はさまざまあり,食物や薬剤アレルギー,血管炎などの膠原病,喘息,血液疾患などの疾患が考えられる.好酸球数上昇をきたす疾患で忘れてはならないのが寄生虫疾患であり鑑別に入れる必要がある.中国人,好酸球数上昇,両側胸水という臨床情報から,寄生虫疾患を念頭に置いた病歴聴取をする必要がある.特に両側胸水をきたす寄生虫疾患としてウエステルマン肺吸虫症が代表的である.同吸虫はサワガニに寄生していることが多く,サワガニの摂取歴を病歴聴取に加える必要がある.本症例は初診の病歴聴取で1カ月前にサワガニの食歴が判明し,当初より寄生虫疾患を念頭に鑑別を進めた.CTでは左のS1+2に浸潤影を認めた(図2).両側胸水の鑑別,好酸球数上昇の鑑別を進めながら,血清の抗寄生虫抗体の一次スクリーニング検査を提出したところウエステルマン肺吸虫3+であった.宮崎大学医学部寄生虫学教室に二次検査を依頼し,確定診断を得た.

中国人はサワガニを塩漬けで食べる習慣があり,本寄生虫は塩漬けにしても死滅しないことから,感染源となりうる.経口摂取された幼虫は小腸壁を貫き,腹腔内,横隔膜を通過し,最終的に肺内に虫嚢を形成し産卵する.虫卵の大きさは50~80 μm,成虫は約1 cmとされる.確定診断は便,呼吸器検体からの虫卵の証明であるが,検出されないことも多く,本例のように血清診断に頼らざるを得ない.本邦では,1990年以降は年間5〜10例の患者が新規発生している.治療はプラジカンテル 75 mg/kg/日の3日間投与である.本症例は投与1カ月後には自覚症状の改善と好酸球数の正常化,両側胸水の減少を得た(図3).

好酸球数上昇の患者を診た場合は病歴聴取が重要である寄生虫疾患を鑑別に入れたい.

図1 来院時胸部単純X 線写真 図2 来院時胸部単純CT 図3 1 カ月後胸部単純X 線写真

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プロフィール

北村淳史(Atsushi Kitamura)
聖路加国際病院 呼吸器内科
山口哲生(Tetsuo Yamaguchi)
新宿海上ビル診療所
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