画像診断Q&A

レジデントノート 2017年8月号掲載
【解答・解説】湿性咳嗽,呼吸困難を主訴に来院した80歳代男性

ある1年目の研修医の診断

胸部単純X線写真(図1)にて右上肺は胸郭形成術後であることがわかる.右上肺野,左下肺野を中心にすりガラス影~浸潤影を認める.病歴から市中肺炎を考えて喀痰検査などを行う必要がある.

Answer

浸潤性粘液産生性腺癌(IMA)

  • A1 :左右にすりガラス影〜浸潤影を認める(図1).特に左下肺野の浸潤影が著しい.
  • A2 :2カ月間の長期経過であること,発熱がなく湿性咳嗽と呼吸困難が主訴であること,抗菌薬が無効であることなどから,浸潤性粘液産生性腺癌(invasive mucinous adenocarcinoma:IMA)などを考えて,胸部CTや気管支鏡検査を行う.

解説

本症例は,市中肺炎にしては経過が2カ月と長期で発熱がなく,湿性咳嗽と呼吸困難が主訴であることがポイントである.他院での抗菌薬治療が無効であることから,市中肺炎以外の病気を鑑別にあげる必要がある.図2のCTにて陰影は左右に広がっており,浸潤影の周囲にすりガラス影を伴っていた.肺結核も鑑別にあがるが,IMAを考えるべきである.当院転院後も各種培養採取後に広域抗菌薬での加療を継続したが,陰影や自覚症状は悪化傾向で,湿性咳嗽が著明であった.本症例は喀痰を蓄痰し,くり返し病理細胞診に提出し,IMAとの診断となった.その後患者の希望で対症療法での緩和医療の方針となった.

IMAは,2004年のWHO分類(第3版)では,細気管支肺胞上皮癌(bronchiolo-alveolar cell carcinoma:BAC)に分類されていたが,BACのなかにきわめて予後のよいものと予後の悪いIMAとが混在していたために,これを区別する必要があった.そのため,2011年のWHO分類(第4版)では,BACという呼び名をやめて,これまでの予後のよい限局性のBACを“lepidic pattern”,本症例のように肺炎型で予後の悪いものをIMA(pneumonic pattern)と命名した.

IMAは腫瘍細胞が正常の肺胞上皮と似ているために細胞診での診断が難しく,一般的には化学療法は効きづらいタイプの肺癌であり,注意が必要である.

図1
図2
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プロフィール

北村淳史(Atsushi Kitamura)
聖路加国際病院 呼吸器内科
山口哲生(Tetsuo Yamaguchi)
新宿海上ビル診療所
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