画像診断Q&A

レジデントノート 2018年3月号掲載
【解答・解説】下腹部痛・右下肢痛を主訴に受診した40歳代女性

Answer

坐骨ヘルニア

  • A1:右大坐骨孔に小腸が陥入しており,右坐骨ヘルニアと診断した(図12).

解説

坐骨ヘルニアは骨盤ヘルニアの一種であり,坐骨孔をヘルニア門とした稀な疾患である.

骨盤腔には,両側の坐骨と仙骨の間に頭側から仙棘靱帯,仙結節靱帯の2つの靱帯が走っている.仙棘靱帯の頭側に大坐骨孔,仙結節靱帯の頭側に小坐骨孔が形成され,大坐骨孔は梨状筋によって梨状筋上孔と梨状筋下孔に分けられる.坐骨ヘルニアはこの大坐骨孔および小坐骨孔より脱出するヘルニアである.

坐骨ヘルニアのうち成人発症例は約8割で,その多くが高齢女性であり,これは男性に比較すると女性の骨盤が大きいこと,妊娠,便秘,腫瘍,外傷などに伴う腹圧の上昇や,加齢による骨盤底筋群の脆弱性が原因として考えられている1,2).坐骨ヘルニアの内容は小腸,大腸,卵巣,卵管,尿管,膀胱,腫瘍などがあげられる1,2).坐骨ヘルニアの症状としては,大殿筋下の膨隆,坐骨神経圧迫による骨盤痛や大腿部痛を訴える場合がある.腸管がヘルニア内容となって嵌頓すると,嘔吐,腹痛,腹部膨満などの腸閉塞による症状が出現する1,2)

画像検査は近年ではCTを撮影することがほとんどである.本症例においては特にMPR(multi planar reconstruction:任意多断面構成)を作成することにより,骨盤を形成する骨,靱帯,筋肉の位置関係から詳細なヘルニア門の情報が得られ,より正確な術前診断を得ることが可能であった.また3D-CTを作成することでも詳細な解剖学的情報を得ることが可能であり,診断に有用であると言えるだろう.さらに読影の際には,嵌入している腸管に虚血を疑うような造影不良域や腸閉塞を示唆するような所見がないかを確認することも重要である.

治療は基本的には外科的手術であり,本症例も診断後,消化器外科による緊急手術が行われた.陥入していた腸管は壊死に至っておらず,腸管切除は行わなかった.

【読影のポイント】

画像の左右を見比べて,非対称な箇所がないかを探す

ヘルニアを認めた場合,ヘルニア内容を同定し,腸管の場合は腸管虚血や腸閉塞の有無も合わせて確認する

図1
図2
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文献

  1. Black S:Sciatic hernia.「Hernia 3rd edition」(Nyhus LM,et al,eds),pp432-441,Lippincott,1989
  2. 浅沼修一郎,他:イレウスで発症した坐骨ヘルニアの1例.日臨外会誌,73:720-724,2012

プロフィール

山根 彩(Aya Yamane)
日本医科大学付属病院 放射線科
関根鉄朗(Tetsuro Sekine)
日本医科大学付属病院 放射線科
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