画像診断Q&A

レジデントノート 2018年5月号掲載
【解答・解説】発熱,呼吸困難,左下腿疼痛で受診した50歳代男性

ある1年目の研修医の診断

蜂窩織炎があり,両側肺に結節影が多発しているので,敗血症性肺塞栓症を考え,血液培養や胸部CTを行います.

Answer

敗血症性肺塞栓症の1例

  • A1 :両側肺に広範かつ胸膜側優位に境界不鮮明な結節影や斑状影が多発している.その分布は下肺野優位である.
  • A2 :敗血症性肺塞栓症を疑い,血液培養,胸部CT,心臓超音波検査を行う.

解説

敗血症性肺塞栓症(septic pulmonary embolism:以下SPE)の典型例である.多発結節影~斑状影を呈する疾患の鑑別として,転移性肺腫瘍,肺結核症,肺クリプトコッカス症,多発血管炎性肉芽腫症(Wegener肉芽腫症),SPEなどがあげられるが,40℃の発熱と炎症反応高値,蜂窩織炎の存在とDダイマー高値であることから,SPEを第一に考える.

SPEは,敗血症に伴う菌塊が塞栓子となり末梢肺動脈に塞栓をきたす疾患である.感染性心内膜炎や感染性静脈炎が原因となることが多いが,その他の原因として,皮膚軟部組織感染症,肝膿瘍,腎膿瘍,中心静脈カテーテル感染症,永久心臓ペースメーカー感染症などがあげられる.起因菌は,黄色ブドウ球菌が50~80%を占めるとされるが,一次感染巣の部位により起因菌は異なる.診断には2セット以上の血液培養は必須で,それに加えてカテーテル刺入部の塗抹培養や,抜去カテーテルの培養を積極的に行う.また感染性心内膜炎(特に右心系)の評価は必須である.

本症例の胸部単純X線写真(図1)では,両側肺に広範かつ胸膜側優位に境界不鮮明な結節影や斑状影が多発している.その分布は下肺野優位である.胸部CT(図23)では,両側肺胸膜側優位に結節影が多発し,一部空洞形成()も伴っている.これらの結節影は気管支血管束や小葉構造に無関係な分布(ランダムな分布)を呈しており,血行性の分布が考えられる.血液培養にて黄色ブドウ球菌が検出され,左下肢の蜂窩織炎を一次感染巣とするSPEと診断した.心臓超音波検査(経胸壁および経食道)では感染性心内膜炎の所見は認めず,その他の臓器にも異常は認めなかった.入院後,敗血症から急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)を発症し,人工呼吸器管理を含めた集中治療を要したが,約4週間の抗菌薬治療および全身管理にて改善が得られ退院となった.

なおSPEの原因疾患として頻度は少ないが,麻薬常習者の反復する薬物注射による発症や,扁桃炎など耳鼻科系感染症から内頸静脈に血栓性静脈炎をきたし本症に至るLemierre症候群は知っておくとよい.麻薬常習者では腕の注射痕の存在,Lemierre症候群では上気道炎症状が先行し,胸鎖乳突筋に沿った圧痛を認めることがヒントとなる.

図1
図2
図3
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プロフィール

笠井昭吾(Shogo Kasai)
東京山手メディカルセンター 総合内科,地域診療・救急部門
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
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