画像診断Q&A

レジデントノート 2018年9月号掲載
【解答・解説】咳嗽,発熱,血痰,呼吸困難を主訴に受診した60歳代女性

Answer

びまん性肺胞出血

  • A1 :両側下肺野を中心に広範な浸潤影を認める.
  • A2 :抗菌薬無効の浸潤影であり,図1からは薬剤性肺炎,好酸球性肺炎,特発性間質性肺炎〔非特異性間質性肺炎(nonspecific interstitial pneumonia:NSIP)および急性間質性肺炎(acute interstitial pneumonia:AIP)〕,びまん性肺胞出血,心不全などが考えられる.このなかで血痰という症状に着目すれば,びまん性肺胞出血,心不全,AIPに絞り込まれる.検査としては胸部CT,尿検査,ANCA(antineutrophil cytoplasmic antibody:抗好中球細胞質抗体),抗GBM抗体,抗核抗体などの測定を行い,施行可能であれば気管支鏡検査を行う.

解説

胸部単純X線写真では右側優位に両側下肺野に浸潤影を認める(図1).肺野の容積低下はない.同日施行された胸部CT検査では,下葉優位かつ比較的中枢側優位に浸潤影およびすりガラス影を認めた(図23).一般的に肺胞出血のCT所見は出血の量および病期に応じて浸潤影,すりガラス影,小葉中心性粒状影と多彩な所見を呈するが,胸膜直下がスペアされる傾向が特徴であり,今回も同様の所見を示した1)

本症例はまず血痰という主訴に着目すべきである.患者が血痰・喀血を主訴に受診した場合,吐血との鑑別が必要となる.さらに,血痰・喀血と判断した場合には2つのパターンを鑑別することが重要である.1つは局所からの出血,すなわち空洞性病変もしくは気管支拡張症などからの出血であり,もう1つはびまん性肺胞出血である.これらを鑑別する意義は,局所からの出血の場合は大量喀血による窒息のリスクがあるためで,場合によっては止血処置(気管支動脈塞栓術など)を行う必要があるからである.この鑑別には胸部CTが有用であるが,局所からの出血では大量喀血時を除けば貧血および低酸素血症を認めないことも重要なポイントである.血痰に貧血および低酸素血症を認めるときはびまん性肺胞出血を強く疑うべきで,この場合に次に行うことは気管支鏡検査である.気管支肺胞洗浄を行い,回収液が徐々に赤くなることを確認できればびまん性肺胞出血の診断は確実となる2).本症例も気管支鏡検査を施行し,同所見が得られたのでびまん性肺胞出血と診断した.

びまん性肺胞出血の原因は毛細血管炎,bland pulmonary hemorrhage,びまん性肺胞障害(diffuse alveolar damage:DAD)の3つに分類される3).このなかで最も重要なのは毛細血管炎であり,特発性の場合もあるが,多くの場合はANCA関連血管炎,Goodpasture症候群,全身性エリテマトーデスなどが背景にあることが多いため,MPO-ANCA,PR-3ANCA,抗GBM抗体,抗核抗体などの測定が有用である.しかし,これらは結果が判明するまで数日かかるため,尿検査を行いタンパク尿および尿中赤血球を認めれば血管炎によるびまん性肺胞出血が強く示唆されるため,ステロイドなどの免疫抑制薬の治療を開始すべきである.bland pulmonary hemorrhageとは毛細血管炎のない緩やかな肺胞出血をさし,原因として薬物,凝固異常などがある.また,DADでも二次的に肺胞出血がみられることはあるため,気管支肺胞洗浄で上記の所見が得られてもDADは否定できない.

最後に,本症例では血痰と高度の貧血があり,びまん性肺胞出血を疑うことが容易であったが,びまん性肺胞出血の約30%は血痰を呈さないとの報告もあるため,抗菌薬不応性の肺浸潤影,急性呼吸不全および貧血の進行をみたらびまん性肺胞出血を鑑別にいれることが重要である3)

図1
図2
図2
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文献

  1. Krause ML, et al:Update on diffuse alveolar hemorrhage and pulmonary vasculitis. Immunol Allergy Clin North Am, 32:587-600, 2012
  2. Cordier JF & Cottin V:Alveolar hemorrhage in vasculitis:primary and secondary. Semin Respir Crit Care Med, 32:310-321, 2011
  3. Lara AR & Schwarz MI:Diffuse alveolar hemorrhage. Chest, 137:1164-1171, 2010

プロフィール

茂田光弘(Mitsuhiro Moda)
東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
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