画像診断Q&A

レジデントノート 2019年2月号掲載
【解答・解説】頸部痛,咽頭痛で受診した50歳代男性

ある1年目の研修医の診断

頸椎症による痛みでしょうか.それにしては,頸部痛が強く,炎症反応も高値ですので,化膿性脊椎炎も考えられます.

Answer

石灰化頸長筋腱炎

  • A1:T2強調像矢状断で椎体前方の軟部組織に腫脹を伴う高信号域(図1A)とC2レベル腹側に低信号結節を認める(図1A,B).脂肪抑制T2強調像では頸長筋とその周囲の軟部組織に,高信号域(図1C)と環軸関節の滑液包の液貯留(図1C▶︎)を認める.なお,左耳下腺には嚢胞がみられるが,病態とは無関係である.
  • A2:頸部CTを撮影する.頸部CTでは歯突起の腹側正中に8 mmの結節状の石灰化(図2A,B)と椎体腹側の軟部組織の腫脹(図2A)を認める.

解説

石灰化頸長筋腱炎は塩基性リン酸カルシウム結晶(basic calcium phosphate:BCP)が椎前筋の前部を構成する頸長筋の環椎前結節部に付着し,急性炎症をきたす疾患である.以前はハイドロキシアパタイトの沈着が原因とされたが,厳密にはほかの化合物が混在しており,現在ではBCPの沈着と考えられている.

好発年齢は30~50歳代であり,急激な頸部痛,頸部の運動制限,嚥下痛や開口障害で発症する.症状や炎症反応が強く(WBC 17,000 /μL以上,CRP 15 mg/dL以上を示す症例も報告されている)1),crowned dens syndrome(環軸関節偽痛風),咽後膿瘍,髄膜炎,化膿性脊椎炎と臨床像が類似することがあるが2),本症はself-limitingな疾患であり,治療法はNSAIDsやステロイドによる対症療法が中心である.そのため,他疾患との鑑別が求められる.

MRIでは椎体前方の腫脹とT2強調像での高信号が認められる.環椎前結節部の石灰化は低信号として描出されるが,これを指摘するには注意深く観察しなければならない.一方,頸椎X線写真やCTでは環椎前結節部に結節状の石灰化が描出されるが,X線写真では十分な感度が得られないためCTの方が有用と報告されている3).臨床像から本症例を疑った場合,あるいはMRIで椎体前方に腫脹を伴う高信号域を認めた場合には,CTを撮影し,環椎前結節部の石灰化を検索することが重要である.

石灰化頸長筋腱炎は咽後膿瘍,化膿性脊椎炎などと臨床像が類似しうるが,画像検査から診断できる疾患である.ほかの鑑別疾患とは異なり,NSAIDsを中心とした対症療法で改善するため,画像検査の担う役割が大きい.

図 1
図 2
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文献

  1. 土田知也,他:頸部痛を来す疾患との鑑別が必要となる石灰沈着性頸長筋腱炎6例の検討.聖マリアンナ医科大学雑誌,45:105–111,2017
  2. 山下ゆき子,他:咽後膿瘍と鑑別を要した石灰沈着性頸長筋腱炎の3例.日本耳鼻咽喉科学会会報,119:955-961,2016
  3. 中嶋大介,他:咽後膿瘍が疑われた石灰沈着性長頸筋炎症例.口腔・咽頭科,19:309-315,2007

プロフィール

井上明星(Akitoshi Inoue)
東近江総合医療センター 放射線科
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