画像診断Q&A

レジデントノート 2019年2月号掲載
【解答・解説】乾性咳嗽を主訴とした50歳代男性

Answer

TS-1による薬剤性肺炎の1例

  • A1 :中心静脈カテーテルポートが挿入されており(図1),右横隔膜が挙上している.胸部X線像の両側に斑状のすりガラス影がみられる(図1).胸部CT像でも斑状にすりガラス影がみられる(図2).
  • A2 :被疑薬に対して薬剤リンパ球刺激試験(drug lymphocyte stimulation test:DLST)を行う.
  • A3 :被疑薬を中止する.呼吸不全が進行する場合などはステロイド薬を投与する.

解説

薬剤性肺炎とは,投薬中に起きた肺炎のなかで薬剤と関連があるものと定義される.DLSTは,薬剤性アレルギーが疑われる患者の感作されたリンパ球と被疑薬を混合し,リンパ球が分裂・増殖する程度をチミジンの取り込み量で測定する検査法である.本邦では以前から広く行われていたが,2012年4月より保険適用となった.薬剤性肺炎の症例報告ではDLSTの結果により当該薬剤を断定している論文が多い.薬剤性肺炎のDLST陽性率は,全体の66.9%と報告されている.DLSTの主な問題点は薬剤自体がリンパ球刺激作用を有している場合の偽陽性,薬剤自体がリンパ球機能抑制作用を有している場合の偽陰性である.つまり,DLSTの結果は薬剤性肺炎の診断に絶対的なものではない.薬剤性肺炎は臨床経過や他疾患の鑑別,被疑薬による薬剤性肺炎の報告例との整合性などを検討し,総合的に診断すべきである.

TS-1はテガフール,ギメラシル,オテラシルカリウムの3成分を含有する製剤である.TS-1による薬剤性肺炎の発症頻度は低く,0.03%と報告されている1).TS-1使用開始から12カ月後に発症した薬剤性肺炎が報告されているが2),多くは使用開始から1カ月以内に発症している.胸部CTでは末梢優位に浸潤影,すりガラス影がみられることが多い.気管支肺胞洗浄液では好中球もしくはリンパ球優位な細胞数増加がみられ,CD4/CD8は一定の傾向はみられない.治療経過は被疑薬の中止のみで軽快する場合もあるが,ステロイド薬投与を必要とする場合もある.

本症例はTS-1内服中に肺炎を発症しており,日和見感染症,原病の悪化(膵頭部癌の肺転移)を鑑別する必要があった.そのため,TS-1を休薬し,第2病日に気管支鏡検査を行った.気管支肺胞洗浄液の総細胞数は4.0×105 /mLと増加しており,細胞分画ではマクロファージ60%,リンパ球35%,好中球5%とリンパ球増加を認めた.CD4/CD8は1.23であった.気管支肺胞洗浄液培養では有意な菌は培養されなかった.また,TS-1に対するDLSTは587%と陽性であった.その後,TS-1休薬のみで軽快し,総合的に判断してTS-1による薬剤性肺炎と診断した.

図1
図2
  • 画像はクリック/タップで拡大します

文献

  1. 伊藤俊輔,他:経気管支肺生検が診断に有用であったTS-1による薬剤性肺障害の1例.日本呼吸器学会誌,49:949-954,2011
  2. 野原 淳,他:TS-1内服開始から12カ月後に発症したと疑われる薬剤性間質性肺炎の1例.日本呼吸器学会誌,46:206-209,2008

プロフィール

芳賀高浩(Takahiro Haga)
関東労災病院 精神科
山口哲生(Tetsuo Yamaguchi)
新宿海上ビル診療所
サイドメニュー開く

TOP