インフルエンザウイルスは市中肺炎の原因微生物の約10%を占める.冬季の重症肺炎では積極的にインフルエンザウイルスによる肺炎を疑って対処すべきである.
インフルエンザ肺炎の死亡率は7.1%であり,抗インフルエンザ薬の存在する現在では迅速な診断が求められる1).
本邦ではインフルエンザが疑われた場合,医療機関を受診してインフルエンザ迅速抗原検査を受け,陽性であれば抗インフルエンザ薬で加療するという流れが一般的となっている.
一方でインフルエンザ迅速抗原検査の感度が100%でないことはしばしば臨床上問題となり,インフルエンザ肺炎においても,インフルエンザ迅速抗原検査の感度は約80%であったと報告されている2).インフルエンザ迅速抗原検査の結果が陰性だからといってインフルエンザを否定すると,診断を誤る可能性があることに留意する必要がある.
本症例はインフルエンザ罹患者との接触歴があり,インフルエンザ肺炎を強く疑った.
入院後くり返し行ったインフルエンザ迅速抗原検査はすべて陰性であったが,入院時40倍であったインフルエンザウイルス(H2N3)に対する抗体価は2週間後に320倍となり,インフルエンザ肺炎と診断した.
インフルエンザ肺炎は原発性インフルエンザウイルス肺炎,ウイルス細菌混合性肺炎,二次性細菌性肺炎の3病型に大別される.
本症例では,喀痰培養検査で有意な原因微生物は同定されなかったが,膿性痰がみられ,血液検査では白血球数増多,CRP著増を呈し,胸部X線像(図1)は浸潤影が目立つとされる細菌性肺炎に合致していた.胸部CT像では両側の背側優位に,エアーブロンコグラム(図2▲)を伴うコンソリデーションがみられ,細菌性肺炎と矛盾しない所見であった.
これらのことからウイルス細菌混合性肺炎であったと考えられたため,治療はオセルタミビルおよびタゾバクタム/ピペラシリンを併用し,第17病日に軽快退院した.