画像診断Q&A

レジデントノート 2019年11月号掲載
【解答・解説】急性の陰嚢痛で受診した10歳代後半男性

ある1年目の研修医の診断

病歴から精巣捻転をまず疑います.提示画像は超音波ですか? すみません,見慣れていないので造影CTで血流の有無を確認したいです.

Answer

左精巣捻転症

  • A1:カラードプラで左精巣の血流が確認できない(図2).
  • A2:追加の画像検査は基本的に不要.

解説

今回は超音波画像のみを提示したが,診断自体は容易であったかと思う.精巣捻転はその言葉通り,何らかの理由により陰嚢内で精巣が捻転し,疼痛や壊死などをきたす疾患である.詳しい分類などは成書に譲るが,急性陰嚢症のなかでも頻度が高く,新生児期と思春期の二峰性ピークを示すことが有名である.外科的緊急性の高い疾患で,診断の遅れは精巣の出血壊死につながる.また,精巣の温存のためには発症からおよそ12時間以内に捻転を整復する必要がある.

超音波検査に対して苦手意識をもっている研修医の先生も多いと思うが,本疾患を診断するために最も優れたモダリティは超音波検査である.精巣への被曝もなく簡便で,提示画像のように左右両方の精巣にリニアプローブ(図3)を当てれば誰でも容易に精巣が描出できる(図1).次にカラードプラで必ず左右の精巣の血流を比較し,患側の血流低下の有無を確認すればよい(図2).慣れてくれば精索の捻転茎を同定することも可能だ.一方,CTで精巣捻転を正しく診断することは実は放射線科の後期研修医でも難しい.造影MRIで精巣の造影効果に左右差を確認できれば診断は可能であるが,いつでも緊急でMRIを撮影できる施設は多くないだろう.また乳幼児では撮影時の鎮静も必要になる.

画像診断において最も重要なことは「異常所見を拾うこと」ではなく,正しいモダリティの選択,さらに診断に至るための適切な撮影であると筆者は考えている.もしCT撮影により若年者の精巣を被曝させ,かつ正しく診断できないとなると,その患者に対してharmfulな行為となってしまう.超音波検査と違い,CTやMRIなどの撮影の際,実際に医師が機械を操作することはほとんどないだろう.しかしすべての画像検査において,何を最も疑い,どのような疾患と鑑別するために撮影するのか,それを明確にしなければ「診断のための適切な画像」にはならない.せっかく撮影したのに正しく診断できないこともありうるだろう. 「画像診断の本当に大切な部分は,撮影前からはじまっている」ということを忘れてはならない.

図1
図2
図3
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プロフィール

山内哲司(Satoshi Yamauchi)
奈良県立医科大学 放射線科・総合画像診断センター
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