画像診断Q&A

レジデントノート 2019年12月号掲載
【解答・解説】右季肋部痛で受診した20歳代女性

ある1年目の研修医の診断

病歴から虫垂炎かなーと思ってたんですが,上腹部の画像ですか.特に大きな異常はなさそうですが….

Answer

Fitz-Hugh-Curtis症候群(クラミジア感染による)

  • A1:肝表が早期濃染している(図1).骨盤内の腹膜の肥厚と脂肪織混濁が認められる(図2).
  • A2:Fitz-Hugh-Curtis症候群.

解説

Fitz-Hugh-Curtis症候群(FHCS)という疾患名を聞いたことがあるだろうか.1920年にFitz-Hugh とCurtisらが,淋菌性卵管炎を有する女性で「肝周囲炎」を合併することがあると報告をして以来,こう呼ばれるようになった.その後,淋菌だけでなくクラミジア感染にも続発することがわかり,現在はこちらが主となっている.本例もクラミジア感染に続発したものであり,抗菌薬で治療された.本邦でも決して稀な疾患ではない.

FHCSの症状は下腹部痛とそれに続く上腹部痛や嘔気とされ,帯下増加などの婦人科系症状を伴うことが多い.しかし実際,若い研修医相手にいきなりさらさらと婦人科系症状を訴えてくれる患者は少ない.ここはしっかりと頭のなかで本疾患を鑑別にあげ,性交歴や婦人科系症状など積極的に聴取することが重要である.また本症例のように先に上腹部痛を感じる患者も多いことも知っておくべき事項だろう.当初,虫垂炎を疑われるケースがたいへん多いことも,本疾患の特徴といえるかもしれない.

正しい診断への鍵は,CTをどう撮像するかである.若年女性の腹痛でCTを撮影する場合,通常は被曝軽減を意識し撮影回数を絞る.しかしFHCSの診断には造影早期相が不可欠なのである.次に示す画像を見てほしい.図1Aは動脈相,図1Bはほぼ同レベルの平衡相を示している.図1A内にで示した,肝表面を縁取るような濃染がわかるだろうか.これが「肝周囲炎」を疑う所見である.意識していないと見逃すことも多く,また平衡相では門脈血流によりやってきた造影剤で肝実質がほぼ均一に造影されてしまい,この所見を指摘することは難しくなる.では念のため全例に早期相を撮影するべきかというと,やはり可能な限り不必要な被曝は避けたい.診断のために詳細な読影も必要だが,それ以前に適切な患者に適切なCT撮像を行うことが大切で,それにはやはり丁寧な病歴聴取と診察が重要である.

図1
図2
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プロフィール

山内哲司(Satoshi Yamauchi)
奈良県立医科大学 放射線科・総合画像診断センター
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