画像診断Q&A

レジデントノート 2020年3月号掲載
【解答・解説】息切れ,倦怠感,食欲不振,体重減少を主訴に受診した40歳代男性

Answer

HIV感染者のニューモシスチス肺炎の一例

  • A1:両側上中肺野優位にすりガラス影,内部に多発嚢胞性陰影を認める(図1).下肺野および胸膜直下は冒されていない.
  • A2:亜急性から慢性経過であることと前述の画像所見より,ランゲルハンス細胞組織球症やHIVに合併したニューモシスチス肺炎が鑑別にあげられる.HIV感染のリスクとなる性交渉や薬物注射に関する追加の病歴聴取を行うとともに,血液検査でHIV抗原・抗体,KL-6,β-Dグルカンの測定を行う.

解説

胸部単純X線写真では,両側上中肺野優位すりガラス影,内部に多発嚢胞性陰影を認める一方で,下肺野および胸膜直下は冒されていなかった(図1).同日施行されたCTでは,胸膜直下が冒されていないすりガラス影とその内部に多発性嚢胞性病変を認めた(図23).多発嚢胞性病変を呈する疾患としてはランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis:LCH)リンパ脈管筋腫症(Lymphangioleiomyomatosis:LAM)Multicentric Castleman's disease,Sjögren's症候群関連の肺病変,HIVに合併したニューモシスチス肺炎(Pneumocystis pneumonia:PCP)などがあげられる.これに加えて,肺気腫も肺炎を併発するとswiss cheese appearanceと呼ばれる浸潤影内部に嚢胞が多発したような所見を呈することがある.このように多発嚢胞性病変を呈する疾患は多岐にわたるが,HIV-PCP以外の疾患では,嚢胞は離散的に展開しており,嚢胞どうしの間には正常肺が認められる.本症例のような密集かつ連続した嚢胞を呈する疾患はHIV-PCP以外にはほぼなく,画像から第一にPCPの可能性を疑うことができる.追加の病歴聴取で,不特定多数の人と避妊具なしでの性交渉歴があることが判明し,追加の血液検査でKL-6 3,000 U/mL,β-Dグルカン 510 pg/mL,HIV抗原・抗体 陽性,CD-4陽性リンパ球数90 /μLだったため,HIV-PCPが強く疑われた.その後,診断確定のため気管支鏡検査を施行したところ気管支洗浄液からDiff-Quik染色でニューモシスチスのシストを認め,診断確定となった.

PCPは免疫不全患者に生じる日和見感染症の1つである.かつてはHIV感染者に合併する症例が多かったが,近年は各種免疫抑制治療の普及などを背景にHIV患者以外に発症するPCPが増えており(Non-HIV-PCP),日常診療で遭遇する可能性が高い呼吸器疾患の1つである.PCPの画像所見は広範なすりガラス影が主体であるが,多彩な陰影を呈することで知られる.また免疫不全を起こす原因となっている背景疾患によって画像所見が異なる1)Non-HIV-PCPと異なり,HIV-PCPでは20%の頻度で薄壁嚢胞を呈することが報告されている2).本症例のように嚢胞が連なるように広範にわたる例はきわめて稀ではあるが,ほかの嚢胞性疾患では本例のような密集した嚢胞を呈することはほぼなく,画像からHIV-PCPを強く疑うことができる.仮に画像から強く疑うことができなくとも,鑑別として思い浮かべることができれば,病歴聴取および血液検査で診断に至ることは容易であるため,嚢胞性病変の鑑別にHIV-PCPを入れておくことは重要である.また,分布に関しては,Non-HIV-PCPでは地図状分布,びまん性分布を呈することもあるが,HIV-PCPにおいては末梢が冒されていないことが40%と高頻度で,特徴の1つである2)

本症例では低酸素血症を生じていたが早期に診断がついたため,すぐにST合剤およびステロイド治療を行い,すみやかな改善が得られた.PCPは一般抗菌薬が無効であり,治療が遅れれば致死的になることから早期診断・治療が望まれる.

図1
図2
図3
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文献

  1. Tasaka S & Tokuda H:Pneumocystis jirovecii pneumonia in non-HIV-infected patients in the era of novel immunosuppressive therapies. J Infect Chemother, 18:793-806, 2012
  2. Fujii T, et al:Pneumocystis pneumonia in patients with HIV infection:clinical manifestations, laboratory findings, and radiological features. J Infect Chemother, 13:1-7, 2007

プロフィール

茂田光弘(Mitsuhiro Moda)
東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
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