画像診断Q&A

レジデントノート 2020年4月号掲載
【解答・解説】咳嗽,血痰を主訴に受診した20歳代男性

Answer

多発血管炎性肉芽腫症

  • A1:胸部X線写真では,右上肺野(小葉間裂上なので右上葉)にair bronchogramを伴う浸潤影(図1),右肺門部,左上中肺野胸膜側に結節影(図1)を認める.第一に細菌性肺炎は鑑別にあげる必要がある.
  • A2:胸部CTで,肺炎では説明のつかない多発結節影を認める.鼻出血,耳痛,尿潜血陽性の臨床情報と合わせて考えると,多発血管炎性肉芽腫症が鑑別にあがる.
  • A3:血清ANCAの測定と気管支鏡検査を行い,可能な全身状態であれば外科的肺生検を検討する.

解説

まず胸部X線を見た段階では,肺炎は十分に考えられる.しかし胸部CTを撮影すると通常の細菌性・非定型肺炎では説明のつかない多発結節影を認める.敗血症性肺塞栓症(septic emboli)も重要な鑑別診断であるが,それだと右上葉の浸潤影が説明できない.上気道出血からはじまる典型的な臨床経過と,後述する画像所見の特徴から多発血管炎性肉芽腫症granulomatosis with polyangiitis:GPA,旧称Wegener肉芽腫症)を疑うべき一例である.第2病日に気管支鏡検査(気道内の出血所見),第3病日に外科的肺生検を施行し,血清PR3-ANCA 350 U/mL以上の著明な上昇と組織診断結果よりGPAと確定診断した.

GPAはANCA関連血管炎に分類される原因不明の全身性肉芽腫性疾患で,本症例のように上気道→肺→腎の順に症状が発現する全身型が一般的だが,なかには限局型と呼ばれる肺病変のみの症例も存在する.画像の特徴は,① 両側性の多発結節・腫瘤影,② びまん性肺胞出血や壊死性肺炎などを反映した浸潤影・すりガラス影,③ 気道病変の3つ1)があげられる.結節・腫瘤影は1 cm未満から10 cmを超える大きさのものまでさまざまであり,air bronchogram(図2),feeding vessel sign,空洞形成,内部壊死を反映した結節内低吸収域(図2),周囲に出血によるすりガラス影を伴うCT halo sign(図2)などがみられることが特徴である.びまん性肺胞出血はGPAの約10%にみられ,Crazy-paving appearanceを伴うこともある.また気道の壁肥厚・狭窄所見は,中枢気道から区域・亜区域枝までのいずれの領域においてもみられる場合がある1)

GPAで陽性化するANCAは,欧米では80〜90%がPR3-ANCAであるが,本邦ではPR3-ANCAが54.6%,MPO-ANCAが45.5%2)と異なる.またANCA陰性の症例もあるため注意が必要である.

標準治療としては,ステロイドとシクロホスファミドが用いられる.本症例ではステロイドパルス療法とシクロホスファミドパルス療法により一時改善したがその後再燃し,難治例で検討されるリツキシマブの投与で寛解に至ることができた.

GPAは診断が遅れると,急速進行性糸球体腎炎(RPGN)などを呈し,死亡を含めた重篤な転帰を辿る可能性がある.適切に治療介入すれば寛解する疾患であるため,早期に鑑別にあげ診断・治療につなげることが重要である.

図1
図2
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文献

  1. 「胸部のCT 第4版」(村田喜代史,他/編),メディカル・サイエンス・インターナショナル,2018
  2. Sada KE, et al:Different responses to treatment across classified diseases and severities in Japanese patients with microscopic polyangiitis and granulomatosis with polyangiitis: a nationwide prospective inception cohort study. Arthritis Res Ther, 17:305, 2015(PMID:26525413)

プロフィール

川述剛士(Takeshi Kawanobe)
JR東京総合病院 呼吸器内科
山口哲生(Tetsuo Yamaguchi)
新宿つるかめクリニック
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