画像診断Q&A

レジデントノート 2020年8月号掲載
【解答・解説】乾性咳嗽を主訴に受診した60歳代女性

Answer

肺腺がんの多発肺転移

  • A1:両肺びまん性に多発小結節影を認める.鑑別には,肺がんの多発肺転移,転移性肺腫瘍,粟粒結核,サルコイドーシスなどがあげられる.右下肺野に2つの大きな結節(図1)を認めており,ここを原発巣とした肺がんの多発肺転移を最も疑うが,転移性肺腫瘍の可能性も残る.粟粒結核,サルコイドーシスとしては,小結節影が大きすぎる印象である.また粟粒結核としては,結節の大小不同が目立つことも合わない.
  • A2:胸部CTを施行し,さらに鑑別を絞りこむ.まずは喀痰検査で抗酸菌や細胞診の検査を行う.さらに悪性腫瘍の精査のため,18F-fluorodeoxyglucose positron emission tomography(FDG-PET)などで全身検索を行いつつ,確定診断のために気管支鏡検査を行う.

解説

びまん性多発小結節影を呈する疾患の鑑別は,胸部HRCTにおける結節の分布が ① リンパ路性分布② ランダム分布③ 小葉中心性分布のいずれかを判断し,それをもとに鑑別診断を絞り込んでいく1)

本症例は胸部CTで境界明瞭な多発小結節影(図2AB)を認め,HRCT(図2D)で小結節は血行性を示唆するランダム分布と判断できるため,サルコイドーシスなどのリンパ路性分布を示す疾患は否定的となり「肺がんの多発肺転移,転移性肺腫瘍,粟粒結核」などが鑑別として残る.粟粒結核は1〜3 mm大の比較的均一なサイズの微小結節2)が特徴であるが,本症例は5 mm以上のサイズの大きな結節が多く,結節の大小不同も目立つ点がそれとは合わない.発熱などの症状がなく,喀痰抗酸菌塗抹検査とインターフェロン-γ遊離試験(クォンティフェロン®TB)は陰性であった.これを踏まえると,粟粒結核の可能性は低くなる.以上から肺がんの多発肺転移か転移性肺腫瘍を考えることになるが,右下葉S9,10にそれぞれ33 mmと30 mm大の腫瘤影(図2B)を認め,FDG-PETで同部位に集積亢進があり,肺以外の臓器には悪性を疑う所見は認めないことから右下葉の原発性肺がんの可能性が高くなる.気管支鏡検査で右下葉の腫瘤の生検を行い肺腺がんの診断が得られた.縦隔条件(図2C)では10 mm未満のリンパ節しかなく有意な腫大はなかったが,FDG-PETで同側および対側の縦隔リンパ節への集積亢進があったため,TNM分類のN因子はN3となり,頭部造影MRI検査で脳転移を認めないことと合わせて,TNM分類は,cT4N3M1aで病期分類StageⅣaの肺腺がんと診断した.EGFR(epidermal growth factor receptor:上皮成長因子受容体)遺伝子のexon 19欠失変異が陽性と判明したことから,EGFR-TKI(tyrosine kinase inhibitor:チロシンキナーゼ阻害薬)による治療を開始した.

両肺びまん性多発小結節影を呈する疾患は多岐にわたるため,結節影の分布パターンごとに整理しながら鑑別を進めていくことが重要である.

図1
図2
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文献

  1. 「肺HRCTエッセンシャルズ」(Elicker BM,Webb WR/著,髙橋雅士/訳),pp39-49,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2014
  2. 「胸部のCT 第3版」(村田喜代史,他/編),p364,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2011

プロフィール

川述剛士(Takeshi Kawanobe)
JR東京総合病院 呼吸器内科
山口哲生(Tetsuo Yamaguchi)
新宿つるかめクリニック
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