画像診断Q&A

レジデントノート 2020年10月号掲載
【解答・解説】発熱と腹痛で来院した80歳代女性

ある1年目の研修医の診断

拡張している小腸があるので,イレウスや腸閉塞かと思います.発熱も関係しているかはわかりません.

Answer

魚骨誤飲による消化管穿孔

  • A1:左側小腸内から外部に突出するような線状の高濃度域が複数認められ(図DE▶︎),その周囲を中心に脂肪織混濁を伴っている(図DE▶︎).
  • A2:魚骨誤飲による消化管穿孔.

解説

魚をよく食べる文化が根付く本邦において,魚骨の誤飲は決して珍しいことではない.一般的には高齢者が多く,これは口腔内の感覚低下や舌運動の低下,義歯の装着なども原因とされている.仮に魚骨の存在に気づいていてもそのまま飲み込む高齢者もいるようで,筆者が実際に研修医のときに経験した症例では「今まで飲み込んでも別に大丈夫だったから」という,高齢者ならではの武勇伝を聞かせてもらったりもした.

魚骨が消化・吸収されることは難しいが,確かにそのまま運よく直腸に達して便と一緒に排泄されることもあるのだろう(もちろん受診しないので,正確な確率はわからない).しかし,本症例のように消化管のどこかでひっかかり,消化管壁を突き破る場合もある.穿孔部は小腸が多く,原因となる魚はタイ,カレイ,ブリなどが多いとされる.症状は急激に発症する腹痛,腹膜炎症状で,それに伴って蠕動低下を起こし,麻痺性イレウスの状態を起こす場合もある.一部は穿孔しても症状が軽微で,そのまま慢性的な肉芽腫形成の「核」になる場合もあるようだが日常的に遭遇する頻度はそれほど高くない.

画像診断にはCTが有用で,魚骨を疑う数cm程度の細い線状高濃度域が消化管内外を貫くように認められ,周囲の脂肪織濃度上昇や腹膜の肥厚が認められれば確診度は高い.注意すべきは本症例のようにfree airが認められない症例がある点である.これは魚骨が壁内に残っている場合,airが消化管から出るほどの孔ができていないためと考えられる.また造影CTのみを観察していると,高濃度の魚骨が見つけにくいことがある.どんなときでも単純CTの読影に手を抜いてはいけない.

今回は過去の本コーナーのようにキーとなるスライスのみを掲載すると診断が容易になりすぎると思い,いま流行りのオンラインミーティングで編集部と相談し,少し誌面での提示画像を増やした.やはり「撮影範囲から異常を見つける」ことが大切である.

なお2020年5月号ではPTPシート誤飲の症例を紹介している.こちらも消化管穿孔の原因となりうるため,あわせて確認しておくとよいだろう.

図1
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プロフィール

山内哲司(Satoshi Yamauchi)
奈良県立医科大学 放射線科・総合画像診断センター
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