画像診断Q&A

レジデントノート 2020年11月号掲載
【解答・解説】発熱と会陰部痛で来院した80歳代女性

ある1年目の研修医の診断

会陰あたりにairみたいな濃度があるように見えます.病歴からは膿瘍を疑っていたんですがあまり膿瘍っぽくないですね.

Answer

Fournier(フルニエ)壊疽

  • A1:会陰部の皮下や筋内などにガス像が認められる(図1CD).その周囲には脂肪織濃度上昇がみられる.
  • A2:Fournier壊疽.

解説

Fournier壊疽は会陰部,陰嚢部,肛門周囲などに発症する壊死性軟部組織感染症の呼称である(19世紀にFournierにより最初に報告された).高齢者で,背景に糖尿病など免疫能低下の要因となるような基礎疾患を有する症例が多い.女性は稀とする文献もあるが,筆者は女性例もしばしば経験している.致死率が高い予後不良の疾患で,鼠径部や大腿部,後腹膜腔などにも感染が急速に拡大することもあるため,すみやかな外科的処置(デブリードマン)と抗菌薬の投与が必要である.原因菌は溶連菌,黄色ブドウ球菌,大腸菌,緑膿菌など多岐にわたり,混合感染も多い.すでに抗菌薬投与がなされている場合などでは耐性菌も問題となる.

臨床診断として強い悪臭を放ち,会陰部が赤黒く腫脹していれば積極的に疑うことが可能であるが,どの程度の範囲に病変が及んでいるかを確認する意味でもCTが撮影されることが多い.CTは皮下や筋内のガス像を検出するのに有用である.「壊死性筋膜炎」という呼称が有名ではあるが,実際には筋膜に感染が限局している症例は少なく,皮膚,皮下脂肪,筋膜,筋内などに広く分布する疾患であり,名称そのものが病態を表しているものではないことに注意が必要である.

COVID-19のパンデミックが世界中を賑わし,そのなかで読者の多くは「発熱患者」の取り扱い方に,昨年までの研修医とは大きく異なる姿勢が求められているはずだ.ただ発熱や咳嗽で来院する疾患はCOVID-19以外にも多数ある.PCR検査が診断のすべてであるかのように一部のメディアなどで取り沙汰されているが,診療における検査とは本来,医師が行う「診断」全体のほんの一部分,それぞれの感度や特異度,検査前確率など踏まえて使用するツールにすぎない.もちろんこのコーナーで扱ってきた画像もそうだ.N95マスクをしていると本症例の「異臭」を感じることが難しい場合もあるが,そんな今日の難しい診療でも,診断のプロセスは日頃から研ぎ澄ました五感と病歴聴取からスタートするということを決して忘れてはならないと考える.

図1
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プロフィール

山内哲司(Satoshi Yamauchi)
奈良県立医科大学 放射線科・総合画像診断センター
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