画像診断Q&A

レジデントノート 2020年12月号掲載
【解答・解説】微熱・倦怠感・吸気時の胸痛を主訴に受診した20歳代男性

Answer

縦隔原発非セミノーマ

  • A1:右肺門部に巨大腫瘤影を認め(図1),右肺門部血管とのシルエットサイン陽性である(図1)ことから肺門構造に接する病変と考えられる.腫瘍性疾患では肺門部肺癌,縦隔腫瘍,稀なもので血管肉腫などが,非腫瘍性のものでは多発血管炎性肉芽腫症などが鑑別診断となる.肺膿瘍は末梢肺野から起きるため,肺門構造と連続するような本例では可能性は低い.多発血管炎性肉芽腫症としても他臓器所見が乏しく,まずは腫瘍性疾患を考える.これだけ巨大な肺門部肺癌であれば周囲に無気肺や癌性リンパ管症などの所見を伴うことが多いはずで,それらがないことから縦隔腫瘍を最も考える.
  • A2:2週間の経過で,腫瘤が急速に増大している(図2).20歳代の若年者で急速に増大する腫瘍となると縦隔腫瘍,特に悪性胚細胞腫瘍(セミノーマ・非セミノーマ)や悪性リンパ腫などを疑う.

解説

巨大肺門部腫瘤の一例である.胸部CT(図3)では巨大な前縦隔腫瘍であり,2週間で急速に増大する経過を考慮すると悪性胚細胞腫瘍悪性リンパ腫をまず疑うが,可溶性IL-2受容体 377 U/mLと上昇なく,造影CT(図4)でangiogram signも認めないことから悪性リンパ腫の可能性は低く,悪性胚細胞腫瘍を最も疑う.悪性胚細胞腫瘍はセミノーマ非セミノーマに分けられ,非セミノーマは組織像の違いで卵黄嚢腫瘍胎児性癌絨毛癌およびこれら2つ以上の成分からなる混合型などに分類される.診断には組織生検が必須であり,本例は経皮的生検により非セミノーマのうち卵黄嚢腫瘍(yolk sac tumor)と診断した.卵黄嚢腫瘍は腫瘍マーカーのAFPが異常高値を示すのが特徴であり,本例も初診時に5,813 ng/mL,2週後に11,502 ng/mLと著明な上昇を認めた.また造影CTは内部不均一で辺縁部が特に増強される非セミノーマに特徴的な所見図4)を示しており,これは内部均一に増強されるセミノーマとの鑑別に有用な所見1)である.

本例は精巣を含めた他臓器に腫瘍を認めない縦隔原発非セミノーマの一例である.標準治療である導入化学療法(BEP療法:ブレオマイシン,エトポシド,シスプラチン)を4コース施行した後に外科的切除を行い寛解し,以後再発は認めていない.縦隔原発非セミノーマは5年生存率45%2)との報告もあり,週単位で急速に進行する例もあるが,寛解も見込める疾患であるため,臨床で遭遇した場合には早急に治療に繋げることが重要である.

図1
図2
図1
図2
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参考文献

  1. 「胸部のCT 第3版」(村田喜代史,他/著),pp384-387,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2011
  2. Bokemeyer C, et al:Extragonadal germ cell tumors of the mediastinum and retroperitoneum:results from an international analysis. J Clin Oncol, 20:1864-1873, 2002 (PMID:11919246)

プロフィール

川述剛士(Takeshi Kawanobe)
JR東京総合病院 呼吸器内科
山口哲生(Tetsuo Yamaguchi)
新宿つるかめクリニック
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