画像診断Q&A

レジデントノート 2021年4月号掲載
【解答・解説】心窩部痛および右下腹部痛を訴える20歳代女性

ある1年目の研修医の診断

異常がわかりません.病歴からは虫垂炎を考えたいのですが,それらしい所見も見つけられません.

Answer

明らかな異常所見なし(臨床診断:便秘症の疑い)

  • A1:上行結腸内腔には,明らかに病的とはいえないが便塊が比較的目立つ.右骨盤内に正常虫垂が同定される(図1D▶︎).

解説

今回は,はっきりした症状の原因が指摘できず,正常虫垂の同定を目的とした症例を提示した.これは歴史ある本コーナーでも,初の試みである.本症例のように虫垂炎を疑う病歴の患者に対してCTを撮影したものの,虫垂炎を疑う所見が見つからないことはよくある.その際に「本当に虫垂炎でない」のか「自分が虫垂炎の所見を見つけられないだけ」なのか,しばしば悩み,困ることがあるかと思う.

著者はたくさんの初期研修医と話す機会があるが,虫垂炎の画像診断は常に彼らの大きなテーマである.それと同時に,実は画像診断医の我々でも悩むことがよくある.CTで正常虫垂を同定できると,ひとまず「虫垂炎の可能性は低いだろう」と判断を大きく前進させることが可能となるため,正常虫垂の同定を今回のテーマとしてとり上げた.なお本症例は患者の再受診がなく,「便秘症の疑い」として診療が終了した.

虫垂は盲腸から連続し,盲端に終わる管状の構造で,太さは5 mm前後,長さは5〜10 cm程度であることが多い.当然これは個人差があるため,あくまでも目安である.腹腔内脂肪に乏しい場合には周囲の消化管などの構造と離れておらず,同定が難しいこともしばしばあるが,日頃からの練習が何よりも大切である.

見つけ方については,まず慣れるまでは肛門からS状結腸,下行結腸と順に追跡していき,上行結腸を下降していく癖をつけたほうがよいだろう.上行結腸と連続する回腸を同定し,その分岐部(図1C▶︎)より尾側(つまりこの部分が盲腸)から出る細い管状の構造が同定できれば,虫垂である可能性が高い.またこのとき,必ず盲端で終わることを確認したほうがよい.虫垂内腔は盲腸内と連続しており,正常であれば内腔に空気が認められることが多い(図1D▶︎,ない場合もある).細い線状・管状の空気濃度を盲腸の周囲に認めた場合,虫垂の可能性が高いことから,このような「線状の空気」を見つけることに注力するのもよいだろう(図2▶︎図3▶︎).上行結腸の固定不良があると右下腹部に存在しない場合もあるため,いきなり右骨盤内から探すと迷子になることがあり注意が必要だ.

以前から,初期研修医たちより「正常虫垂の同定法を習得したい」という声がとても多く寄せられていたため,今回は変則的にこのようなテーマとした.次回以降は,今まで通りにさまざまな疾患を扱っていくつもりである.

図1
図2
図3
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プロフィール

山内哲司(Satoshi Yamauchi)
奈良県立医科大学 放射線科・総合画像診断センター

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