無気肺は,その形成機序により閉塞性,受動性,圧迫性,癒着性,瘢痕性などに分類されるが,画像診断では閉塞性か非閉塞性(受動性,圧迫性,癒着性,瘢痕性)に分けて考える1)と理解しやすい.肺葉単位の大きなものから肺野末梢の小さなものまでいずれも同じ無気肺として分類されるが,本例は左下葉全体の大きな無気肺で,内部にair bronchogramも伴わないことから閉塞性の機序を考える(図1).閉塞性無気肺の原因は腫瘍性疾患,痰,異物などがあげられ,本例は肺腺癌が原因であった.
両側下葉は肺門と下肺靭帯により固定されているため,無気肺となる場合にはmajor fissureが内側後方へと偏位し,縦隔側に接するように肺が虚脱する(図2).そのため左下葉無気肺の場合は,胸部X線写真正面像で心陰影の裏に重なるように縦隔に接する三角形の陰影を形成する(図3).また虚脱した部分にair bronchogramを伴わないことも特徴である.胸部CT写真からは,#4Lのリンパ節腫大(図4A),肺門部の腫瘤性病変とそこにつながる左下葉無気肺(図4B)が起きていることがわかる.
肺葉無気肺は肺葉ごとに特徴的な胸部X線像を示すため,それぞれのパターンを押さえておくことが重要である.