画像診断Q&A

レジデントノート 2021年4月号掲載
【解答・解説】健診異常を主訴に受診した60歳代女性

Answer

肺腺癌による左下葉無気肺

  • A1:気管,縦隔が左側に偏移し,心陰影に重なるように三角形の陰影を認め,下行大動脈とのシルエットサインが陽性であり,左下葉無気肺の所見である.側面像では虚脱した左下葉の陰影を反映して,椎体後面のあたりから肋骨横隔膜角にかけて透過性の低下を認めている.
  • A2:左の主気管支から分岐するはずの下葉枝が認められず(図1A),無気肺の内部にair bronchogramもみられないことから,下葉枝の中枢部分を閉塞させる病変を考える.左下部気管傍リンパ節(#4L)がある部位から無気肺のラインが連続してつながっており(図1A),#4Lリンパ節の腫大と肺門部腫瘤があるため,その下方の無気肺と連続していると推測できる.これらより左肺門部腫瘍により左下葉無気肺が起きていると考えられ,気管支鏡検査で肺腺癌が原因と診断した.

解説

無気肺は,その形成機序により閉塞性,受動性,圧迫性,癒着性,瘢痕性などに分類されるが,画像診断では閉塞性非閉塞性(受動性,圧迫性,癒着性,瘢痕性)に分けて考える1)と理解しやすい.肺葉単位の大きなものから肺野末梢の小さなものまでいずれも同じ無気肺として分類されるが,本例は左下葉全体の大きな無気肺で,内部にair bronchogramも伴わないことから閉塞性の機序を考える(図1).閉塞性無気肺の原因は腫瘍性疾患,痰,異物などがあげられ,本例は肺腺癌が原因であった.

両側下葉は肺門と下肺靭帯により固定されているため,無気肺となる場合にはmajor fissureが内側後方へと偏位し,縦隔側に接するように肺が虚脱する図2).そのため左下葉無気肺の場合は,胸部X線写真正面像で心陰影の裏に重なるように縦隔に接する三角形の陰影を形成する(図3).また虚脱した部分にair bronchogramを伴わないことも特徴である.胸部CT写真からは,#4Lのリンパ節腫大(図4A),肺門部の腫瘤性病変とそこにつながる左下葉無気肺(図4B)が起きていることがわかる.

肺葉無気肺は肺葉ごとに特徴的な胸部X線像を示すため,それぞれのパターンを押さえておくことが重要である.

図1
図2
図2
図2
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文 献

  1. 負門克典:無気肺.呼吸器ジャーナル,68:106-112,2020
  2. 栗原泰之:無気肺を極めよう.「新 胸部画像診断の勘ドコロ」(高橋雅士/編),pp69-77,メジカルビュー社,2014

プロフィール

川述剛士(Takeshi Kawanobe)
JR東京総合病院 呼吸器内科
山口哲生(Tetsuo Yamaguchi)
新宿つるかめクリニック

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