画像診断Q&A

レジデントノート 2022年3月号掲載
【解答・解説】意識障害と痙攣で受診した60歳代女性

ある1年目の研修医の診断

悪性腫瘍の既往があることから脳転移を考えます.

Answer

可逆性後頭葉白質脳症(posterior reversible encephalopathy syndrome:PRES)

  • A1:両側後頭葉の斑状の高信号域と造影効果および脳溝血管の異常造影効果().
  • A2:高血圧,腎不全,子癇,敗血症,多臓器不全,自己免疫性疾患,免疫抑制剤,抗がん剤,分子標的薬,違法薬物(コカインなど),臓器移植など.

解説

可逆性後頭葉白質脳症(posterior reversible encephalopathy syndrome:PRES)は,reversible posterior leukoencephalopathy syndrome(RPLS)とも呼ばれ,高血圧,腎不全,子癇,敗血症,多臓器不全,自己免疫性疾患,免疫抑制剤,抗がん剤,分子標的薬,違法薬物(コカインなど),臓器移植などさまざまな原因により引き起こされる可逆性白質脳症である.症状は頭痛,嘔吐,意識障害,痙攣,視覚障害,運動障害などである.発症機序として,ⓐ 重症高血圧による血圧調節破綻,ⓑ 血管収縮による虚血,ⓒ 血管内皮障害による透過性亢進,ⓓ 免疫学的機序による透過性亢進が考えられている.適切な対症療法(高血圧に対する降圧,原因薬剤の中止など)で回復するとされる.

MRIはCTよりも血管性浮腫を検出するのに鋭敏である.血管性浮腫はMRIのT1強調像で低信号,T2強調像およびFLAIR像で高信号,CTでは低吸収域として描出される.多くの症例(約70%)では病変は頭頂葉,後頭葉の皮質下白質を中心に対称性に分布する.しかしながら,皮質に病変がみられること,また頻度は低いが,前頭溝,分水嶺領域,小脳半球,脳幹部,基底核または脊髄に病変が分布することも知られている.拡散強調像やADCmapで脳梗塞を示唆する拡散低下を認める場合は予後不良とされる.造影される病変は約20%に認められるとされるが,造影効果と重症度あるいは神経学的予後の相関は明らかにされていない1)

Fugateは① 急性発症の神経症状,② 画像検査における血管性浮腫,③ 神経症状および画像所見が可逆的の3項目をPRESの診断基準として提唱した2)他疾患との鑑別を要することもあり,対症療法の後,異常信号が消失してはじめて診断に至ることも少なくない.本症例では高血圧とパゾパニブが原因と考えられ,降圧薬投与,パゾパニブ中止により対処され,2日後には血圧が正常化し,意識が回復した.また,6日後のMRIでは後頭葉の異常信号が消失した.なお,本症例では初回のMRIで拡散低下はみられず,神経学的後遺症を残さず回復した.

非典型的な画像所見を呈するPRESの診断は容易でないが,頭頂後頭葉の皮質下白質を中心に対称性に分布するPRESに典型的な異常信号域を認めた際には,原因となる病態や薬剤を中止し,臨床的,画像的な改善を確認することが重要である.

図
  • 画像はクリック/タップで拡大します

引用文献

  1. Fischer M & Schmutzhard E:Posterior reversible encephalopathy syndrome. J Neurol, 264:1608-1616, 2017(PMID:28054130)
  2. Fugate JE, et al:Posterior reversible encephalopathy syndrome:associated clinical and radiologic findings. Mayo Clin Proc, 85:427-432, 2010(PMID:20435835)

プロフィール

井上明星(Akitoshi Inoue)
メイヨークリニック 放射線科

TOP