大動脈瘤破裂は致死的な緊急疾患であり,突然の大量出血として発症する一方で,段階的に進行することもある.段階的な進行では,動脈壁の明らかな破綻を伴わないものの破裂が切迫した状態であるimpending ruptureから,動脈壁は破綻しているが出血が周囲組織により一時的に被包化されるcontained rupture(sealed rupture)へ移行し,最終的には動脈壁が完全に断裂し,出血が制御されないfrank ruptureに至る.
臨床症状としては,impending ruptureやcontained rupture の場合は 腹部痛や腰背部痛が主で,嘔気や腹部膨満感などの症状を呈することもある.身体診察では動脈瘤部分を体表からも触れることができ,同部に圧痛を伴う場合がある(impending ruptureやcontained ruptureの動脈瘤は脆弱であるため,強く圧迫せずに触診するよう要注意).
破裂のリスクを示唆する兆候として,有症状,大きな大動脈瘤(胸部大動脈瘤で最大短径55~60 mm以上,腹部大動脈瘤で最大短径50~55 mm以上),high-attenuating crescent sign,瘤にブレブのような形状不整,半年間で最大短径が5 mmの増大,急速な形態変化,が知られている1,2).
本症例の単純CTでは,大動脈瘤内に高吸収な壁在血栓(high-attenuating crescent sign)がみられた(図1).これは,動脈瘤の壁内血栓内側に亀裂が生じ,動脈血が亀裂を介して壁内血栓の外層に拡大して比較的新しい血栓を形成している状態であり,新鮮血腫部の大動脈壁は脆弱化しているとされ,切迫破裂を示唆するとされている2).ただし,無症状の場合は待機手術,瘤増大がなくhigh-attenuating crescent signのみであれば経過観察となることもある.大動脈瘤周囲に脂肪織濃度上昇がある場合は,感染性大動脈瘤や炎症性大動脈瘤も鑑別に挙がるため,発熱や炎症反応上昇の有無を評価することが求められる.
腹部大動脈のfrank ruptureでは大量の後腹膜血腫を伴う.本症例では,比較的少量の左後腹膜出血のみが認められ,脳動脈瘤でいわれる警告頭痛や警告出血,minor bleedingと類似した状態であろう.また本症例は腹痛があり,CTにて腹部大動脈瘤(計測すると横径約10 cm)を認め,高吸収な壁在血栓(high-attenuating crescent sign),左後腹膜腔に血腫を認めた.軽度の炎症反応上昇はあるものの,動脈瘤周囲の脂肪織濃度上昇は乏しく,造影CT撮像のうえで腹部大動脈瘤のcontained ruptureと診断,外科的治療となった.大動脈瘤の破裂リスクを示唆する画像所見はぜひ押さえておきたい.