interview /緊急取材 ● どうなる?新専門医制度と総合診療専門医

interview /緊急取材
どうなる?新専門医制度と総合診療専門医
最近,新専門医制度を巡る議論が混乱を極めている.特に,新制度の目玉として新たに導入されることになる総合診療専門医については不明な点が多い.レジデントノートの読者には,なかなか定まらない状況に不安を感じている方も多いことだろう.
そこでこのたび編集部では,総合診療専門医のベースとなる家庭医療専門医制度を運営してきた日本プライマリ・ケア連合学会の幹部である,丸山 泉 理事長,草場鉄周 副理事長,前野哲博 副理事長に,新制度の見通しなどについて緊急インタビューを行った.

丸山 泉 氏
丸山 泉 氏
草場鉄周 氏
草場鉄周 氏
前野哲博 氏
前野哲博 氏

—直前になって,新たな専門医制度の仕組みに関する議論が二転三転して,先行きが見通せない状況になっているように思います.

丸山:そうですね.特に,自分の進路に直結する研修医の皆さんにとっては,不安も大きいと思います.

—結局,日本専門医機構による新制度の導入は延期ということになるのでしょうか?

草場:そうです.そのかわり,来年度に関しては各学会が中心となって運営することになります.

—総合診療を除く18領域については,専門医機構と学会はほぼ1対1で対応していたので,主体が学会に移ったとしてもそれほど大きな混乱はないと思いますが,総合診療領域に関しては対応する学会はない,ということになっていますが.

草場:専門医機構は,総合診療領域だけは機構が中心となって運営すると発言しておられますね.

—今回,専門医機構の見直しにあわせて,総合診療専門医の導入も白紙に戻るのではないかという声もあるようですが.

前野:いや,それはないと思います.そもそも,専門医制度の基本骨格は2013年に厚生労働省の「専門医の在り方に関する検討会」で決定されています.今回の見直しは「誰が,いつ,どう運営するか」についての議論であり,総合診療専門医を含む基本骨格の変更を求めているわけではありません.

丸山:それに,今回延期を提唱している団体の皆さんに意見を聞いてみると,総合診療専門医だけは進めてもよい,という意見も多く,今のところ総合診療専門医制度の導入に公式に反対しているところはどこもありません.

—ただ,今回の議論では,専門医機構のガバナンスも問題視されたのですよね.もし総合診療専門医の運営を専門医機構が担当することになった場合,問題はないのでしょうか?

草場:今まで専門医機構の専門医として準備を進めてきた総合診療専門医ですが,実質的には我々日本プライマリ・ケア連合学会が実際に運営している家庭医療専門医制度がベースになっています.また,制度設計の段階から,専門医機構と当学会は緊密に議論を重ねて,ここまで丹念に積み上げてきました.プログラム認定や指導医養成講習会の準備など,実働の部分についても,当学会のメンバーがかなりの部分を担当しています.もちろん課題は残っていますが,一致団結して取り組めば,十分スタートは切れると思っています.

—もし,他の領域と同じように総合診療領域についても機構は運営を担当しない,あるいは導入を先送りにする,という方針になったらどうなるのでしょうか?

草場:その時は,当学会が行ってきた専門医制度があります.先ほど申し上げたように,機構の総合診療専門医制度と根本的に大きな違いはありませんし,我々は実績ももっています.プログラム数も十分ありますから,心配ありません.

—つまり,どちらになってもそれほど大きな違いはない,ということですね.

前野:その通りです.くり返しになりますが,今回の専門医制度を巡る議論は「誰がやるか」であり,「やるかやらないか」ではないんです.そして,誰がやることになったとしても,総合診療を目指す研修医にはきちんとした専門医制度が実質的に提供される,ということに変わりはありません.

—それを聞いて安心しました.

丸山:新制度でいろいろ不安もあるかもしれませんが,我々もこれから最善を尽くして準備を進めていきます.これからの医療を考えると,総合診療医の養成は最重要課題であり,今後もさまざまな形で重点的な支援が行われることは間違いありません.どうぞ安心して,総合診療専門医というキャリアを選んでほしいと思います.

—本日はありがとうございました.

取材日:2016年6月16日 聞き手:編集部 久本容子
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