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最新号(6月16日発行)
2006年7-8月号
(Vol.6 No.4)
定価 2,625円(税込)
バイテクノロジージャーナル最新号詳細

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目次
■ ニュース
サイエンス・トピックス
■ 実験技術
■ 研究戦略
■ 製品紹介
■ コラム&レポート
■ 製品・サービス情報

サイエンス・トピックス

[遺伝子工学]Polony法を用いた1分子ハプロタイピング
 養王田 正文
ハプロタイプとは,片親由来の染色体における複数の対立遺伝子の並びのことである.最近では1本の染色体上のSNPsの並びのことを示す場合が多くなっているが,さまざまな病気の原因遺伝子を特定するためにきわめて重要な情報となっている.しかし,細胞には2組の染色体があるので,単純にSNPsを解析するだけではハプロタイプを決めることができない.特に家系の情報がない場合には,統計処理によりタイピングを行うので,間違った結果が得られることも少なくない.したがってハプロタイプを最も確実に決定する方法は,1本の染色体を対象としたSNPsタイピングである.
本誌2006年5-6月号で紹介したG. M. Churchらは,得意のPolony法を用いて1分子の染色体を鋳型としたハプロタイピング技術の開発に成功した.
[ナノテクノロジー]近赤外線治療とカーボンナノチューブ
 村上義彦
約800 nm〜1mmの波長域にある電磁波(赤外線)は,遠隔操作や通信技術に用いられることが多いが,医療分野へも盛んに応用されている.赤外線の周波数は,さまざまな物質を構成する分子の固有振動数と同程度の範囲にある.そのため,生体に赤外線を照射することによって,生体内において電磁的共振が生じる.この共振によって分子の熱運動が励起され,熱エネルギーが発生する.この温熱効果を人体に応用する医療的な意義は高い.
[バイオインフォマティクス]その時歴史が繰り返した
 村上義彦
配列の相同性検索がこれほど隆盛をきわめる理由は,相同性に基づく機能推定が成功しているからである.配列の比較手法は,Jukes/Cantorや木村による塩基突然変異のモデル(分子進化学),Needleman/Wunschによるダイナミックプログラミング(計算機科学,ただしNeedlemanとWunschは生物学者),DayhoffやHenikoffによるアミノ酸置換マトリクス(分子生物学)という堅牢な理論の上に成り立っている.つまり,同一の塩基/アミノ酸配列に由来する配列同士が近くなるように進化距離が定義されており,その距離における最適なアライメントを正確に計算する仕組みができている.
[組織工学]生体内バイオリアクタによる骨の再生医療
 田畑泰彦
生体組織の欠損部を修復するための治療方法として,生体材料,人工臓器を用いた再建外科治療と組織・臓器移植治療に続く第3の治療の試みがある.これが,再生誘導治療(一般的には再生医療と呼ばれている)である.
(中略)
足場材料や培養装置(バイオリアクタ)などを工夫して,生体外で生体組織様構造物を作る試みが行われているが,得られた構造物の組織学的完成度が低く,生体内に埋入した後の周辺組織との融和性に問題がある.一方,足場,細胞増殖因子および細胞,あるいはそれらの組み合わせを用いて,生体内で生体組織を再生誘導する試みが進められ,すでに再生誘導治療の臨床応用が始まっている組織もある.しかしながら,これらの生体内誘導法にも,再生できる組織のサイズと質などに限界がある.
今回,この問題を解決できそうな1つの方法論が報告された.それは,生体外培養のために用いられてきたバイオリアクタの生体内での利用である.
[タンパク質工学]封入体の正体は?
 津本浩平
以前から封入体形成は,細胞内のタンパク質が局所的に高濃度になる,細胞質内の還元条件,翻訳後修飾がない,ジスルフィドを介した分子間架橋,細胞の品質管理機構によるフォールディング阻害,などの原因が封入体形成を導くと考えられていて),疎水的相互作用からランダムな構造を取るもの,とされていた.が,実際は封入体にはかなり天然に近い構造をもつ分子種が多く含まれることが,われわれも含めいくつかのグループから報告された.となると,変性させずに可溶化できれば大きな前進である.そこで,この封入体に,凝集抑制剤で変性作用をほとんどもたないL-アルギニンを用いたところ,天然類似の構造をもつ分子種を選択的に可溶化できることを見出した.

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