クローズアップ実験法

2022年3月号 Vol.40 No.4 詳細ページ
電気泳動でDNAの1塩基差を迅速・簡便に識別する遺伝子型判別法:PRIMA
角井宏行,山﨑美紗子,清水健太郎
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電気泳動でDNAの1塩基差を
迅速・簡便に識別する
遺伝子型判別法:PRIMA
角井宏行,山

美紗子,清水健太郎

何ができるようになった?
これまでの電気泳動法では野生型 DNA 配列と 1 塩基挿入・欠失配列を判別することが難しかった.
PRIMA では,5 塩基欠失をもつ一本鎖 DNA を共泳動プローブとして用いることで,迅速・簡便に
DNA の 1 塩基差の判別ができるようになり,さらに SNPs タイピングができる可能性も示した.

必要な機器・試薬・テクニックは?
サーマルサイクラー,プローブ,電気泳動装置が必要である.ブローブとして用いる 40 塩基の一
本鎖 DNA は,PCR プライマーと同様にバイオサイエンス関連企業から簡単に入手可能.DNA シグ
ナルの検出にマイクロチップ電気泳動装置を用いるとより簡便かつ高精度な解析ができるが,ポリア
クリルアミド電気泳動でも検出可能.

はじめに

あるとともに,近年の CRISPR/Cas を用いた塩基編集

CRISPR/Cas9 法を代表とする近年のゲノム編集技術

法の開発により,人工的に生じさせることも可能になっ

の発達により,さまざまな生物種に標的配列特異的な

てきている 2).しかしながら,このような DNA1 塩基の

変異を導入することが可能になっている.ゲノム編集

違いを判別することは意外と難しい .最も確実な方法

の基本的な変異導入法では,DNA の二本鎖切断後の非

としてはシークエンス解析による塩基配列決定である

相同末端連結による DNA 修復の際に生じる変異を利

が ,これにはコストや時間がかかる .他にもわずかな

用する.ここで生じる変異の種類(挿入 or 欠失変異,

塩基差を識別する手法として,RFLP 法,T7EI アッセ

および変異のサイズ)は基本的に制御できないが,1 塩

イ,Cel-Ⅰアッセイ,蛍光プライマー法,RGEN-RFLP

基挿入もしくは 1 塩基欠失変異の頻度が高いことが報

法,H M A 法などの手法が開発されてきたが,それぞ

告されている 1).1 塩基挿入・欠失変異はフレームシフ

れの手法に , 1 塩基の解像度がない・使える配列に制

トによって遺伝子機能が破壊された変異体を作製する

約がある・高価な機器や特殊な試薬などが必要,など

うえで好ましい変異のタイプである.さらに,SNP s

の課題がある .本稿では H M A 法 3)を改良することで

(一塩基多型)はゲノム中に無数に存在する自然変異で

D N A 1 塩基の違いを迅速・簡便に判別できる新手法

PRIMA: a rapid and cost-effective genotyping method with single-nucleotide resolution

Hiroyuki Kakui 1)/ Misako Yamazaki 2)/ Kentaro K. Shimizu 2)3):Graduate School of Science and Technology, Niigata University 1)/Department of Evolutionary Biology and Environmental Studies, University of Zurich 2)/Kihara Institute for
(新潟大学 自然科学系 1)/ チューリッヒ大学 進化生物学・環境学研究所 2)/ 横
Biological Research, Yokohama City University 3)
浜市立大学 木原生物学研究所 3))

実験医学 Vol. 40 No. 4(3 月号)2022

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