クローズアップ実験法

2024年4月号 Vol.42 No.6 詳細ページ
接着力の弱い細胞や生体材料を使ったスフェロイドの作製法:メチルセルロース法
小島伸彦
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接着力の弱い細胞や生体材
料を使ったスフェロイドの
作製法:メチルセルロース法
小島伸彦

何ができるようになった?
接着力が弱い細胞ではスフェロイドをつくれない.このような常識を打ち破るため,細胞を強制的
に凝集させる方法を開発した.われわれがメチルセルロース法とよぶこの手法を用いると,2 種類以
上の細胞を組み合わせるに留まらず ,粒子や高分子の形態をとるさまざまな生体材料を素材として ,
寄木細工をつくるようにスフェロイドを設計することが可能である.

必要な機器・試薬・テクニックは?
細胞培養を行っている一般的な研究室であれば,メチルセルロースを購入するだけで試行すること
ができる.実験を効率化する機器や試薬は必要に応じて用意すればよい.細胞懸濁液の吐出作業には
ある程度の習熟が必要である.

はじめに

性によって同種の細胞同士が優先的に接着し,意図す

細胞を球状に凝集させてスフェロイドをつくると ,

る混合スフェロイドが作製できないこともあった.細

細胞の分化機能を引き出すことができる.特に複数種

胞の種類やその組み合わせに依らずにスフェロイドを

類の細胞から構成され,生体組織の三次元構造を再現

つくるためには,細胞任せの passive な細胞凝集法で

するスフェロイドは,オルガノイドともよばれる.ス

は不十分である.本稿で紹介するメチルセルロース法

フェロイドは,低接着培養皿を用いた静置培養や,旋

は,このような問題意識のなかで生まれたものである.

回培養,U 底 96 ウェルプレート,ハンギングドロップ

自在に細胞を凝集させる本法は,伝統工芸である寄木

法 (20 μL 程度の細胞懸濁液の液滴を培養皿のフタの

細工のようにさまざまなデザインをもつスフェロイド

内側に吊り下げて培養する方法)などを用いて作製さ

を生み出すことが可能である.

れるのが一般的である(図 1A)
.しかし,これらの方
法は細胞の接着力に依存しており,効率よく凝集しな
い細胞ではスフェロイドをつくることができなかった.

原理

また , 2 種類の異なる細胞からなるスフェロイドを従

高分子を一定の濃度以上に含む溶液は,高分子を含

来法でつくろうとしても,細胞表面の接着分子の選択

まない少量の溶液と接触すると,その溶液を吸収しな

A method to form spheroids utilizing low adhesive cells and biomaterials: Methylcellulose method
Nobuhiko Kojima:Department of Life and Environmental Science, Graduate School of Nanobioscience, Yokohama City
University(横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科生命環境システム科学専攻)

実験医学 Vol. 42 No. 6(4 月号)2024

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