クローズアップ実験法

2025年9月号 Vol.43 No.14 詳細ページ
新規DNAエレメント“TAx9”によるCre-loxP生物のワン・ステップ作出法
Martin Miguel Casco-Robles,千葉親文
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新規DNAエレメント“TAx9”
によるCre生物の
ワン・ステップ作出法
Martin Miguel Casco-Robles,千葉親文

何ができるようになった?
新規 DNA エレメント“TAx9”の発見により Cre-

一体型ベクターの作製が可能になった.こ

れにより,これまで多大な経費と時間,労力が必要であった Cre-

生物の作出がワン・ステップ

でできるようになった.

必要な機器・試薬・テクニックは?
プラスミド DNA 合成時に使用される標準的な機器・試薬・テクニック.ただし,大腸菌
(

)は NEB Stable Competent

はじめに
Cre-

(High Efficiency)を使用する(詳細は後述).

とによって得られる.しかし,これには多大な経費と

システムをゲノムに導入した生物(Cre-

生物)は,生命科学のさまざまな分野で,体内で

時間,労力を要する.もし,
両方を含む単一のベクター(Cre-

遺伝子と flox 領域の
一体型ベクター)

の遺伝子の働きや細胞の動態を調べるために使用され

が作製できれば,これを受精卵のゲノムに組み込むこ

ている.DNA 組換え酵素である Cre は,

とで,Cre-

とよばれ

生物がワン・ステップで作出できるは

る 34 塩基対の DNA 配列に結合し,部位特異的組換え

ずである.しかし,これは実際には困難である.なぜ

を引き起こす.例えば,ゲノム内の特定の D N A 配列

なら,ベクターを合成するために用いる大腸菌のなか

を 2 つの

で,

で挟むと,

の向きにより,Cre はそ

遺伝子が自発的に発現し,flox 領域に組換えが

の配列を除去(ノックアウト)したり ,反転させたり

起こってしまうからである 1)2).この自発的な Cre 発現

することができる.

や flox 領域の組換えは,

Cre-

遺伝子を発現させるため

生物は一般に,ある特定の条件(組織特異

に用いるプロモーターを真核生物の組織特異的プロモー

的プロモーターの活性化など)で Cre が発現するよう

ターにしたり,Cre を CreER などの誘導型 Cre(通常

に設計した Cre 系統の個体と,2 つの

は不活性状態)にしたりしても抑制できない 1)2).

で挟まれた

D NA 配列(以下 ,fl o x 領域とよぶ)をゲノムにもつ
系統の個体を別々に作出し,それらを交配するこ

Creintegrated vector production technology by TAx9 enabling one-step creation of Creorganisms
Martin Miguel Casco-Robles/Chikafumi Chiba:Institute of Life and Environmental Sciences, University of Tsukuba(筑
波大学生命環境系)
2270

実験医学 Vol. 43 No. 14(9 月号)2025
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