Warburg効果

Warburg効果(好気的解糖).Warburg効果とは,50年以上前にOtto Warburgが観察した現象で,がん細胞は有酸素下でもミトコンドリアの酸化的リン酸化よりも,解糖系でATPを産生する現象である.グルコースは解糖系で代謝された後にミトコンドリアに入ることなく,乳酸に変換される.解糖系は酸化的リン酸化と比較して,ATP産生速度は速いが効率がきわめて悪い.その結果,がん細胞は大量のグルコースを消費することになる.このWarburg効果,実はそのメカニズムもアドバンテージもいまだに明らかになっていない.当初,Otto Warburg自身を含め,ミトコンドリアの呼吸機能障害がWarburg効果の原因であるとする考えもあったが,実際はがんのミトコンドリアにおける呼吸機能障害は稀であり,がん細胞は正常細胞と同等あるいはそれ以上にミトコンドリアで酸化的リン酸化を行い,酸素を消費する.一方で,がん化の過程で,細胞は血管新生能を得るまでは低酸素に曝されるので,Warburg効果は低酸素環境への適応の結果だとする説もある.最近,Warburg効果の意義は解糖系のバイプロダクトとして生体分子の合成材料(核酸とNADPH)を提供することにあるとする説が有力である.Warburg効果はグルコース取り込みをイメージングしてがんを局在診断するFDG-PETに応用されているが,逆に生体内でもがんがWarburg効果を示していることを支持している.一方,すべてのがんでWarburg効果が観察されるわけではなく,事実PETイメージングで検出されない腫瘍も珍しくはない.グルコース以外の他のエネルギー源(アミノ酸,脂肪酸,乳酸など)を環境によって使い分けている可能性もある.上述のようにWarburg効果が顕著ながん細胞でも,酸化的リン酸化は完全には抑制されていない.パスツール効果と合わせて,がん細胞では酸素があってもなくても解糖系が亢進している.しかし,これには「グルコースの供給が十分であれば」という条件が付いている.

実験医学増刊 Vol.30 No.17
実験医学増刊 Vol.31 No.20
実験医学増刊 Vol.35 No.2

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