[Opinion―研究の現場から]

本コーナーでは,実験医学連載「Opinion」からの掲載文をご紹介します.研究者をとりまく環境や社会的な責任が変容しつつある現在,若手研究者が直面するキャリア形成の問題や情報発信のあり方について,現在の研究現場に関わる人々からの生の声をお届けします.(編集部)

第12回 大学院留学 本当のところ

「実験医学2011年6月号掲載」

近年日本では,大学院留学に関する本が出版されたり,各地で説明会が開催されたり,留学への情報面・経済面のサポートが充実しつつある.それにもかかわらず,日本から海外への大学院留学者は減少している.これは1つに日本の教育・研究の水準が上昇し,留学する“必要性”が低くなったことがあげられるかもしれない.では今留学する目的はどこにあるのか? そもそも留学とはどういったものなのか? 今回は米国大学院に留学中の宮崎勇典さんに留学の実態をうかがった.

─なぜ留学されようと思ったのですか?

旅好きで,新しい環境・世界に触れたかったのが大きな理由です.大学院は,研究はもちろん,自由な雰囲気と大学院のあるカリフォルニアの気候で選びました.見学に行った際,直感的にここで研究がしたいと思いました.周囲の日本人留学生に聞くと,やりたい研究がこちらにあると感じたからという理由で留学を決めた人がほとんどです.

─留学先の学生はどんな方が多いのでしょうか?

僕の周りの日本からの留学生は,将来を不安視していない人が多いです.ポジティブにそのときやるべきことに全力で打ち込めば,その後に結果が付いてくるものとみな考えています.他国からの留学生たちは,実験の苦手な人から議論好きで優秀な人まで,考え方も能力もさまざまです.

─留学されてよかったと思うことを教えてください.

世界が広がることだと思います.世界から集まる学生や研究者だけでなく,分野の異なる日本人とも容易に交流することができたのがよかったです.大学に講演にいらした日本人の先生とはプライベートでお話しさせていただいたり,飲みに連れて行ってもらったりもしました.

─留学中はどのくらい費用がかかるのですか?

学費が年間約350万円です.僕の場合は日本からの奨学金と学科からの補助で,学費と保険料,生活費などをまかなっています.米国の博士課程の学生は,奨学金やティーチング・アシスタント,リサーチ・アシスタントとして授業補佐や研究をして支給された給料などで生活しています.

─近年の日本からの留学生減少についてどう考えますか?

人数の減少に関しては,日本の少子化や国内の研究レベルが高いなど色々な要因があると考えていますので気にしていません.ただ,海外の大学院をめざす,視野に入れるきっかけとして周りにモデルがいるかいないかは大きいと思っています.留学が身近に感じられないと,相当難しいイメージがあるのかもしれません.その壁を少しでも低くできればと,UT-OSAC(http://www.ut-osac.org/)や米国大学院学生会(http://gakuiryugaku.net/)という団体で情報を発信しています.

─最後にメッセージがありましたら.

何かをやりたいと思ったときは,日本に限らず大きな視点で考えてみてください.海外の大学院に行くことは,努力をすれば誰でも手が届くものだと思います.

本インタビューを通して,今留学する目的は自分にとってより魅力的な環境に身を置くことであり,留学とは準備をすればどんな人でも手の届くところにあることがわかった.重要なのはどこで何をやりたいか.もし海外に自分のやりたいことがあると思うなら,勇気をもって挑戦して欲しい.

宮崎勇典(Stanford University School of Medicine)

松浦まりこ,久保尚子(生化学者若い研究者の会キュベット委員会)

※実験医学2011年6月号より転載