[Opinion―研究の現場から]

本コーナーでは,実験医学連載「Opinion」からの掲載文をご紹介します.研究者をとりまく環境や社会的な責任が変容しつつある現在,若手研究者が直面するキャリア形成の問題や情報発信のあり方について,現在の研究現場に関わる人々からの生の声をお届けします.(編集部)

第33回 中・長期的な時間をより有効に使うには?

「実験医学2013年3月号掲載」

実験,デスクワーク,スキルアップと,研究生活はとにかく忙しい.そのなかで,心に描く将来を実現させるには,限られた時間を最大限に活かすことが重要である.研究生活における時間の使い方を改善するには,具体的に何を意識し実践すれば有効だろうか.本稿ではここに一案を示したい.

今の研究生活を見直すとき,毎日の効率を上げることに重点をおきがちである.しかし実際に1日や1週間単位の予定を立てると,その実行が意外と難しいことに気づく.特に,実験の進行は予定外の状況に左右されがちである.筆者らの場合,材料となる生物が思うように増えず,予定通りに実験ができないことは珍しくない.実験に生物を使わないという方も,突然の器材の不調や予約待ちで計画が台無しになった経験があるのではないだろうか.そう考えると,研究者が短期的なスパンで時間の使い方を管理するのは現実的とはいえない.

そこで,すでに実践されている方も多いだろうが,数カ月から数年にわたる中・長期的な計画表をつくることを提案したい.まず区切りとなる期間を週単位で横軸に記載する.学生であれば,今から卒業までが1つの区切りになるだろう.そこに普段取り組んでいるテーマの実験やセミナー,数カ月先の学会など比較的差し迫った予定に加え,その先の就職活動や論文投稿,さらには英語の資格試験のような締め切りのない将来への投資についても縦軸にリストアップしていく.そして各項目について,いつ,どれだけの期間,どのくらいの優先度で行うかをまとめると,一種の工程表(ガントチャート)のようになる.こうして予定を目に見えるかたちにすると,短期的には予定の変更があっても,長期的に取り組むべきことは見失わずに済む.

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「やるべきことが見えてくる研究者の仕事術」

また,中・長期的な計画を考えることで,自分の持ち時間を見直すこともできる.例えば今の研究を在学中にまとめ,卒業後は就職したいという希望がある場合,就職活動は卒業の約1年前から本格化し,数カ月間はエントリーシートの提出や面接に追われることになる.企業の説明会まで考慮すれば,就職活動に割かなければならない期間はさらに長くなる.その一方で,論文を投稿し受理されるためにも,数カ月から1年程度の期間が必要になる.在学中の研究を論文にまとめようとした場合,投稿の時期も就職活動と前後したり,重なったりする可能性が高い.もしこのことにあらかじめ気付けば,研究計画の再検討や,就職に関する情報収集に早めに取り組むことができる.このように,今後重要な予定がいつどのように起こるかを予想できれば,差し迫ったタスクと並行して,将来への準備も進められるよう,自ずと日々の時間の使い方が変わってくるだろう.

こうした計画を具体的に立てるうえで,情報の収集は欠かせない.自分で調べるだけでなく,友人や先輩の体験談を聞くことも大切である.進路決定のために必要な行動やそのタイミング,結婚や出産といったライフイベントの計画への影響や対応方法は多くの人が直面する課題であり,経験者からはより現実的なアドバイスが得られるはずである.また,こうした時間の使い方に対する考えを共有することで,自分では思ってもみないアイディアに気付くことができるかもしれない.

もちろん,研究生活の過ごし方に正解はない.できるだけ多くの時間を研究に費やしたいと考える人も,研究とは別に自分の時間をつくりたいという人もいるだろう.いずれにせよ,忙しい日々のなかで自分なりの目標へ向かっていくためには中・長期的な時間を意識したいものである.この機会に,友人や先輩と雑談しながら,今の生活スタイルを振り返り,数年先の計画を立ててみてはいかがだろうか.

定家和佳子,村山 知,早川(芝野)郁美(生化学若い研究者の会キュベット委員会)

※実験医学2013年3月号より転載